「1年間、海外の高校に通ってみたい」——調べ始めると必ず出てくるのが交換留学です。
授業料が免除される、ホストファミリーの家に住める。そんな情報を見て「自分でも行けるかもしれない」と感じた方も多いはずです。
ただ実際に調べ進めると、「国は選べるけど学校は選べない」「団体が5つも6つもあって違いが分からない」「自分の高校で認めてもらえるの?」と疑問が次々に出てきます。
理由は、交換留学が留学エージェントではなく非営利団体が運営する制度で、一般的な留学とは仕組みそのものが違うからです。
この記事では、交換留学の仕組み、5団体の違い、応募条件と選考、在籍校での手続き、渡航後の1年間の流れまでを順番に整理します。
読み終えたときに「自分は交換留学で行くのか、別の方法で行くのか」を判断できる状態を目指しました。
この記事を書いた人
目次
高校生の交換留学とは
高校生の交換留学とは、非営利の国際交流団体を通じて原則1年間(約10か月)、現地のホストファミリー宅に滞在しながら地元の高校に通う制度です。
語学学校で英語を学ぶ留学とは違い、現地の高校生とまったく同じ授業を受け、同じ学校行事に参加します。
その国の10代の生活をまるごと体験することが目的になっています。
交換留学の3つの特徴
まず押さえておきたいのが、交換留学を成り立たせている3つの特徴です。
ここが分かると、後で出てくる「なぜ学校を選べないのか」という疑問もすっきり理解できます。
「民間大使」として派遣されるという位置づけ
交換留学の各団体が共通して使うのが、民間大使(親善大使)という言葉です。
留学生は「英語を学びに来た生徒」ではなく「日本を代表して地域に来た若者」として迎えられます。
そのため現地では、次のような場面が実際によくあります。
裏を返せば、地域の行事やホストファミリーの予定を優先する場面もあるということ。
「勉強だけに集中したい」というタイプよりも、人と関わることを楽しめるタイプのほうが交換留学の1年を活かしやすいのは、ここに理由があります。
国は希望できるが地域・学校・滞在先は選べない
交換留学を検討するうえで、いちばん最初に知っておいてほしいのがこの点です。
「学校が選べない」と聞くと不安に感じるかもしれませんが、これは制度の欠点ではありません。
地域のホストファミリーが受け入れ、その家から通える公立高校に通うという流れなので、順番として先に決まるのが滞在先なのです。
どこに行っても学び取るという気持ちで臨めるかどうかが、交換留学に向いているかの分かれ目になります。
留学カウンセラー
りょう
交換留学と私費留学の違い
高校生の海外留学には、大きく分けて交換留学と私費留学(正規留学)の2つのルートがあります。
どちらも現地の高校に通う点は同じですが、運営する主体も、選べる範囲も、卒業資格の扱いもまるで違います。
ひとことでまとめると、交換留学は「費用が軽い代わりに選べない」、私費留学は「選べる代わりに費用がかかる」という関係です。※具体的な金額の内訳は費用の記事で詳しく解説しています。
ターム留学・1年留学・卒業留学の違い
期間の違いで呼び方が変わるため、ここも混同しやすいポイントです。
どちらを選ぶかの判断軸3つ
交換留学と私費留学のどちらを選ぶかは、次の3つを順番に考えると整理しやすくなります。
目的は「体験」か「資格」か
異文化のなかで生活して視野を広げたいなら交換留学。現地校の卒業資格や特定の科目の履修が目的なら私費留学が向いています。
帰国後の進路と時期が合うか
交換留学は出発時期を選べないため、大学受験のスケジュールと衝突しないか逆算が必要です。時期を自分で調整したいなら私費留学のほうが自由が利きます。
「おまかせ」を受け入れられるか
派遣先が希望と違っても前向きに飛び込めるかどうか。ここに引っかかりを感じるなら、無理に交換留学に合わせる必要はありません。

高校の交換留学が無料に近い理由
「交換留学は無料」という表現をよく見かけますが、正確には本来かかるはずの授業料と滞在費が免除されるという意味です。
なぜ免除が成り立つのか。仕組みを知っておくと、団体を比べるときの判断力が一気に上がります。
現地の公立高校が留学生を受け入れる仕組み
交換留学生が通うのは、多くの場合ホストファミリーが住む地域の公立高校です。
※一部の国では学校への寄付金が必要な場合や、私立校に通う場合もあります。
ホストファミリーが無償で受け入れる背景
もうひとつ大きいのが滞在費です。
交換留学のホストファミリーは、多くの国で無償のボランティアとして留学生を受け入れています。
決まるまでの流れは、おおむね次のとおりです。
異文化交流に関心のある家庭が応募する
報酬のためではなく、家族で異文化にふれたいという動機で手を挙げる家庭が中心です。
現地のコーディネーターが家庭訪問する
部屋の環境や家族構成、受け入れ体制に問題がないかを確認します。
願書の内容をもとにマッチングされる
留学生の趣味・アレルギー・生活習慣などを見ながら組み合わせが決まります。
ここが理解できると、「ホストファミリーを自分の希望で選べない」「気軽に変更を申し出にくい」といった制約にも納得がいくはずです。
それでも自己負担が残るもの
授業料と滞在費が免除される一方で、次のような項目は自己負担として残ります。
これらを合わせると、交換留学でもまとまった費用が必要になります。
出発前にほぼ全額を支払うのが一般的なので、資金計画は1年以上前から立てておくのが安心です。金額の目安や奨学金については、高校留学の費用をまとめた記事で解説しています。
交換留学のメリット・デメリット
ここまでで交換留学の仕組みが見えてきたと思います。
団体を比べる前に、この制度で得られるものと、覚悟しておくべきことを整理しておきましょう。
交換留学で得られる3つのもの
生活のなかで使える語学力
日本人の少ない環境で1年間過ごすため、教室で学ぶ英語とは違う「聞いて返す力」が身につきます。留学生向けの補習クラスがない学校もあり、鍛えられ方が違います。
自分で決めて動く力
親元を離れ、頼れる人が限られた環境で1年を過ごします。困ったときに自分で相談先を探して動く習慣は、帰国後の学校生活や進路選択でもそのまま活きてきます。
進路で語れる自分の経験
総合型選抜や推薦入試では、経験そのものより「そこで何を考えたか」が問われます。挫折と乗り越えの物語を持っていることは、大きな強みになります。
デメリットと対策
いいことばかりではありません。あらかじめ知っておけば対処できるものばかりなので、正直に挙げておきます。
高1で行くか、高2で行くか
いつ出発するかは、帰国後の進路に直結します。多くの相談で悩みどころになるのがここです。
高1の途中から1年
利点:帰国後に受験準備の時間を確保しやすい
注意:応募は中3〜高1の早い段階。準備期間が短い
高2の途中から1年
利点:英語力を高めてから渡航できる
注意:帰国が高3にかかり、受験と重なりやすい
一般入試での大学受験を最優先に考えるなら、高1〜高2前半での1年留学のほうが余裕を持ちやすいと言えます。
総合型選抜や海外大進学を視野に入れるなら、帰国時期の遅さがそこまで不利にならないケースもあります。
帰国後の進路の選択肢
※帰国子女枠や国際生入試は、海外在籍年数などの要件があるため、1年間の交換留学では対象にならないことが多いです。志望校の募集要項で必ず確認してください。
高校生の交換留学プログラム5団体比較
交換留学は団体を通して応募します。
ここでは代表的な5つのプログラムを取り上げ、対象学年・派遣先・特徴を比べてみましょう。団体名をタップすると、それぞれの詳しい紹介にジャンプします。
※対象学年・派遣国・募集時期はいずれも年度によって変わります。応募の際は必ず各団体の最新の募集要項を確認してください。
AFS|歴史が最も長く、奨学金の選択肢が広い

AFS(公益財団法人AFS日本協会)は、高校生の交換留学として世界で最も長い歴史を持つプログラムです。
日本での活動は70年を超え、組織は約60か国にあります。
応募には英検の証明書と在学校からの推薦書が必要とされており、英語力は出発までに英検準2級レベルが推奨されています。
アメリカを希望する場合は、ELTiSという英語力判定テストで一定のスコアが必要です。
国にこだわりがあるなら早い日程で応募するのが基本で、後の日程では募集を続けている国だけが対象になります。
YFU|募集が年3回あり、欧州の非英語圏に強い

YFU(公益財団法人YFU日本国際交流財団)は、半世紀を超える実績を持つ交換留学団体です。
ドイツ・フランス・フィンランド・エストニア・ハンガリーなど欧州の非英語圏の選択肢が充実しているのが特徴です。
英語以外の言語に挑戦したい人に向いています。募集が年3回に分かれているため、一度タイミングを逃しても次の機会を狙えます。
ロータリー青少年交換|自己負担がもっとも軽い制度

ロータリー青少年交換は、世界100か国以上で実施されている国際ロータリーの公式プログラムです。
長期交換では約1年間、複数のホストファミリー宅を移りながら現地の学校に通います。
最大の特徴は費用面で、宿泊・食事・学費はロータリーが負担するため、交換留学のなかでも自己負担が軽い部類に入ります。
一方で注意したいのが窓口です。募集要項・締切・選考方法は地区ごとに異なり、渡航は応募した年度の翌年度になることが多いため、まずは自分の住む地域の地区webサイトを確認するところから始めましょう。
EIL|追加募集のチャンスがあり、奨学金の種類も多い

EIL(日本国際生活体験協会)は、文化交流の架け橋となることを掲げる非営利団体です。
本募集の最終選考は初夏に行われるのが基本ですが、年によっては冬に追加募集が出ることもあるため、他団体の選考結果が出た後でも間に合う可能性があります。
自治体や企業と連携した独自の奨学金が多いのも特徴です。
EF|民間の教育機関で、5か月コースも選べる

EFは1965年にスウェーデンで創業した民間の教育機関で、高校交換留学のプログラムも提供しています。
上の4団体が非営利団体である一方、EFは企業が運営している点が大きな違いです。
出発前の英語レッスンや勉強会といったサポートが手厚いので、非営利団体の選考日程に間に合わなかった場合の選択肢にもなります。
交換留学の応募条件と選考
交換留学は誰でも参加できるプログラムではなく、選抜を通過する必要があります。
「英語がペラペラでないと無理なのでは」と心配する方が多いのですが、実際に見られているのは英語力だけではありません。
一般的な応募資格
団体によって細かな違いはありますが、共通して求められる条件はおおむね次のとおりです。
見落とされがちなのが、成績と出席日数です。
留学の準備に気持ちが向いて日本の勉強がおろそかになると、その成績が応募書類に反映されてしまいます。
応募を決めた時点から、今の学校の成績を維持することも準備の一部だと考えてください。
必要な英語力の目安と足りない場合の対策
英語力の基準は団体と派遣国によって変わりますが、目安として押さえておきたい水準があります。
いま基準に届いていなくても、応募までに1年近く時間があるケースがほとんどです。
中学英文法の総復習と単語の底上げ、そして1日10分でも英語を聞く習慣をつくれば、準2級レベルは十分に射程に入ります。※英語力の基準や必要な試験は団体・派遣国・年度によって変わります。
選考の流れと評価ポイント
選考は一般的に次の3ステップで進みます。
書類審査
願書・成績・英語資格・先生の推薦書や評価表を提出します。志望動機はここで最初に読まれるので、締切直前に書き始めないことが大切です。
筆記・英語力テスト
学科試験やELTiSなどの英語テストを受けます。オンライン受験の団体も増えています。
面接(本人・保護者)
本人と保護者がそろって臨む形式が多く、留学への理解度と家庭の支援体制も見られます。合格後は受入国側の審査を経て、派遣先とホストファミリーが決まります。
落ちる人によくある3つのパターン
交換留学の選考は、英語力の順位を競う試験ではありません。
むしろ「1年間、見知らぬ家庭と学校でやっていけるか」を見られています。
志望動機が「英語を伸ばしたい」で止まっている
語学力の向上は結果であって目的ではありません。異文化のなかで何を体験し、それを帰国後どう活かしたいのかまで自分の言葉で語れるかが問われます。
条件へのこだわりが強すぎる
「都市部でないと嫌」「この国以外は行きたくない」という姿勢は、派遣先をおまかせする制度と相性がよくありません。柔軟さが伝わるかどうかは大きな評価軸です。
準備の開始が遅い
推薦書の依頼、英検の受験、証明書の発行にはそれぞれ時間がかかります。締切間際に動き出すと、書類が揃わずに応募自体を見送ることになりかねません。
留学カウンセラー
りょう
交換留学できる高校と校内手続き
意外と見落とされがちなのが、いま通っている高校での手続きです。
団体の選考に合格しても、在籍校の扱いが決まらなければ留学は成立しません。ここは保護者の方にもぜひ読んでいただきたいパートです。
学校に交換留学制度がある場合の流れ
国際科がある高校や海外の姉妹校と提携している高校では、校内に留学制度や派遣の実績があります。
担任や国際交流の担当の先生に相談する
過去の派遣実績があるため、必要な書類や時期をまとめて教えてもらえます。
校内選抜や学校推薦の手続きを受ける
校内選抜を経て、学校推薦の形で団体に応募する高校もあります。
団体のプログラムに応募する
学校のサポートを受けながら願書を準備できるので、書類の不備が起きにくくなります。
まずは自分の学校に制度があるかどうかを確認するのが最短ルートです。
制度がない高校から応募する方法
「自分の高校には留学制度がないから無理」と諦める必要はありません。
「留学」扱いと「休学」の違い
1年間日本を離れるとき、在籍校での扱いは大きく2通りに分かれます。
どちらになるかで帰国後の学年が変わるので、ここは必ず事前に確認してください。
留学扱い(単位認定)
仕組み:海外での履修を日本の履修とみなして単位を認定
帰国後:同級生と同じ学年に戻れる可能性がある
注意:現地の成績・出席の証明書の提出が必要
休学扱い
仕組み:留学期間は在籍を休み、帰国後に復学
帰国後:出発した時点の学年からやり直す
注意:1学年下の生徒と一緒になるが授業は途切れない
高校での留学の単位認定には、上限が定められています。
省令で定められた単位認定の上限
36単位
校長が留学を認めた生徒について、外国の高校での履修を日本の履修とみなせる上限
そのうえで、次の3点を押さえておいてください。
単位認定を前提に進めたいなら、出発前に計画書を提出し、帰国後に必要な書類と補習の見込みまで含めて学校と相談しておきましょう。
担任に相談するとき伝える5項目
「留学したいです」だけでは話が前に進みません。
相談の場では、次の5点を整理して持っていくと、先生も具体的に検討しやすくなります。
特に4つめの締切は重要です。
英文の成績証明書や公印が必要な書類は発行に時間がかかるため、余裕をもって依頼するほど先生の負担も減り、応募もスムーズに進みます。
高校交換留学の流れと1年間
ここからは、応募を決めてから帰国するまでの流れを時間軸で追っていきます。
準備のスケジュールと、渡航後の1年がどう進むのかをイメージしておくと、心構えがまるで変わります。
出発1年半前からの準備スケジュール
交換留学は、出発の1年以上前に応募が締め切られます。
※団体・派遣国・年度によって前後します。ホストファミリーが出発直前に決まるケースもあります。
渡航後の1年はこう進む
準備のスケジュールはどの記事にも載っていますが、多くの人が本当に知りたいのは「行ってからの1年がどう進むのか」ではないでしょうか。
経験者の話に共通する流れを3つの時期に分けて整理しました。
最初の3か月|いちばんしんどい時期
授業が聞き取れない、雑談に入れない、ホームシックになる。ここで「向いていないのかも」と感じる人がとても多い時期です。逆に言えば全員が通る道なので、部活やボランティアなど顔を覚えてもらえる場所にひとつ入っておくと抜け出しやすくなります。
中盤|生活が回り出し、行事が続く
英語が耳に入るようになり、学校生活のリズムがつかめてきます。その国の年中行事やホストファミリーの旅行など、思い出になる出来事が集中するのもこの時期。日本文化を紹介する機会もよく回ってきます。
帰国前|別れと、日本での再スタート準備
「もっといたい」と感じ始める頃に帰国が近づきます。同時に、単位認定に必要な成績表や出席の証明書を受け取る手続きも進めなければなりません。帰国後の学習の遅れをどう埋めるかも、この時期に考え始めておくと安心です。
ホストファミリーが合わないときの対応
1年間の共同生活ですから、どうしても相性が合わない場合もあります。
そのときは我慢し続ける必要はありません。
まず現地のコーディネーターに相談する
抱え込む前に第三者を入れるのが解決の近道です。
話し合いで解決を試みる
文化の違いによる誤解が原因のことも多く、話してみると解消するケースもあります。
解決しなければ受け入れ先を変更してもらう
リホストと呼ばれる仕組みが用意されており、別の家庭に移ることができます。
相談窓口が現地にあるのは、団体を通す交換留学の大きな安心材料といえます。
交換留学が難しい場合の選択肢
ここまで読んで「思っていたより自由度が低いかもしれない」と感じた方もいるはずです。
選考に通らなかった、募集時期が合わない、行きたい国や学校が決まっている。
そんなときも、海外の高校で学ぶ道は残っています。
エージェントを通せば国・学校・時期を自分で選べる
交換留学は団体が運営する制度なので、留学エージェントが取り扱うことはできません。
裏を返せば、エージェントを通す私費留学は、交換留学でできないことができるということです。
費用は交換留学より重くなりますが、公立校を選ぶ、物価の落ち着いた地域にする、期間を短くするなど、調整できる部分は複数あります。
「行けるかどうか」ではなく「どうすれば行けるか」で考えられるのが私費留学の強みです。
交換留学と併願で進める考え方
いちばんもったいないのは、交換留学の結果が出るまで何も動かず、不合格だった時点で1年を棒に振ってしまうことです。
交換留学の合格発表は出発の8〜10か月前が目安。
そこから私費留学に切り替えると、学校選びや出願、ビザの手配がかなり慌ただしくなります。
だからこそ団体に応募しながら、私費留学のプランと概算も並行して手元に持っておくのが現実的な進め方です。
どちらの結果でも動けるようにしておけば、選考の結果に一喜一憂せずに済みます。
留学カウンセラー
りょう

まとめ
高校生の交換留学は、非営利団体が運営する「費用が軽い代わりに選べない」制度です。
この性質を理解したうえで応募すれば、1年間の重みはまったく変わってきます。
この記事のまとめ
交換留学は、応募の1年前から準備が始まります。
「まだ何も決まっていない」という段階でも、動き出すのが早いほど選べる道は多く残ります。
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