オーストラリアの最低時給は21.38豪ドル(2022年7月以降)で時給は東京の約2倍。ワーホリでがっちり稼げる国として知られています。
しかし、働いたら必ずかかってくるのが税金です。日本でも働いたら所得税を引かれますが、オーストラリアはいかがでしょうか。
今回は2017年に導入されたバックパッカー税についてお伝えし、オーストラリアワーホリメーカーへの税金がどの様に変更されていったのか、そして今現在はどれくらい税金がかかるのかを見てみたいと思います。
2017年1月に導入されたバックパッカー税成立までの流れ
ワーホリメーカーに対する税制改正は2015年までさかのぼります。オーストラリアの現地メディアの報道によると2016年以降は年収8万ドル以下のすべてのワーホリメーカーの税率は一律32.5%とするという予算案が提出されたとなっています。
このワーホリメーカーを狙い撃ちした税制改正は、まるでバックパッカーを狙い撃ちしたかの様だという揶揄の意味から「バックパッカーズ税」と報道されました。このバックパッカー税以降はワーホリは「居住者」から「非居住者」扱いになるとされました。
それまでのワーホリメーカーの税率は以下の通り。
年間所得 |
「居住者」にかけられる税率 |
「非居住者」の税率 |
0~18,200ドル |
0%(免除) |
32.5% |
18,201~37,000ドル |
19% |
|
37,001~80,000ドル |
32.5% |
「居住者」の場合、収入によって税率が免除されます。バックパッカー税成立より前、ワーホリは居住者とされていました。
居住者であっても収入に関係なくお給料からは32.5%引かれていたのですが、日本の年末調整にあたる「タックスリターン」を申請することで、収入に応じて払いすぎた税金が返ってきていたのです。
税務上の計算は以下の通り。
年間所得 |
「居住者」の税計算 |
「非居住者」の税率 |
0~18,200ドル |
0%(免除) |
32.5% |
18,201~37,000ドル |
(課税所得-18,200ドル)×19% |
|
37,001~80,000ドル |
(課税所得-37,000ドル)32.5%+3,572ドル |
それが非居住者扱いになることで、タックスリターンができなくなるため、ワーホリメーカーにとっては実質的に大きな増税になるということです。
しかし、さすがに反発が強くなったのか、ワーホリメーカーすべてに一律32.5%の税率をかけるという案は施行されず、その中間的な内容で落ち着きました。
バックパッカー税の内容
2017年1月から実際にワーホリメーカーに課された税金は年間1ドル〜37,000ドルまでは15%の所得税率。ワーホリメーカーは「非居住者」扱いとなりました。
2017年1月以降の所得税率(バックパッカー税)
年間所得 |
「非居住者」(ワーホリ)の税率 |
1~37,000ドル |
15% |
37,001~80,000ドル |
32.5% |
もともとの案より税が軽減され、しかも18,201〜37,000ドル稼ぐ居住者は税率が19%。ワーホリなら15%だからワーホリの方が居住者よりお得? ということはありません。
居住者が18,201〜37,000ドル稼いだ場合、(課税所得-18,200ドル)×19%が課税され、残りは還付されます。
例:30,000ドル稼いだ場合の税金
- 「居住者」 :(30,000ドル-18,200ドル)×19%=2,242ドル
- 「非居住者」:30,000ドル×15%=4,500ドル
2017年1月以降「非居住者」となったワーホリメーカーにとって、この税制改正は増税ということになります。
ワーホリメーカーも「居住者」扱いにできる?
30,000ドル稼いだ場合、支払う税金が倍以上違います。稼げば稼ぐだけ支払う税金の差が増えるのであれば、いっそのこと居住者扱いにしてもらいたいものですが、それは可能なのでしょうか。
結論としては条件さえ合えば可能です。もともと不可能でしたが、とある裁判をきっかけに居住者として認められれば、ワーホリメーカーも「居住者」扱いにすることが可能になりました。
居住者扱いとして認められる様になったきっかけ
2021年イギリス人ワーホリメーカーが「バックパッカー税はオーストラリア市民権を持たないイギリス人の自分に対する差別行為である。」としてオーストラリア国税局(ATO)を相手取り裁判を起こしたのです。
一度は敗訴したものの、2021年11月に逆転勝訴。勝訴の決め手となったのが、オーストラリアが8ヶ国と協定している租税条約の中の「無差別待遇」(※)という条項です。
(※)租税条約第26条「無差別待遇」
相手国の国民に対して、課税上同様の状況にある自国民に与える待遇より不利益な待遇を与えてはならないという規約
つまり、この協定を結んでいる相手国の国民が課税上の「居住者」と認められる状況にある場合は、「居住者」としての税率を課さなければならないということになります。
ちなみにオーストラリアが租税条約を結んでいる国は、イギリス、ドイツ、フィンランド、チリ、イスラエル、ノルウェー、トルコ、そして日本の8ヶ国です。つまり私たち日本人も居住者と認められる状況にある場合、居住者の税率を受けられるということになります。
居住者の条件とは?
居住者として認められるには「税金上の居住者」である必要があります。
税金上の居住者とはどの様な状態を指すのかと言いますと、一般的にはオーストラリアに住み続けている、もしくはオーストラリアに半永久的に住む意思をもって渡航していきている、とあります。
しかし、ワーホリメーカーは永住権とは違いますので、住み続けているとは言えず、そもそもワーホリは帰国すること前提の制度ですので、半永久的に住む意思をもっていることは本来の目的と異なるため、理論的に対象になりません。
しかし、オーストラリアに6ヶ月以上滞在し、同じ場所に住み、同じ職場で働いている場合も居住者だと考えられます。これに関しては細かい判断基準があり、自己判断で認められるものではありません。
ATOのホームページにて一部ワーホリメーカーへの課税は、条件が合えばオーストラリア国民と同様の税率が適用されると明記されています。また、同様にATOのホームページでは居住者の税率対象なのか、についても触れています。(ATO-Australian resident for tax purposes)
ご自身が居住者にあたるか分からない場合はATOに直接相談することもできます。
ATOへの相談で不安な方は通訳サービスも利用できる
ATOなどオーストラリアの公的機関への問い合わせをする際に利用できるのが通訳サービスです。日本語通訳者と問い合わせ機関との3者通話ができますので大変便利で、オーストラリア国外からも利用できます。
オーストラリア国外から:+61-3-9268-8332
オーストラリア国内から:13-14-50
税率の恩恵を受けるにはタックスリターンの手続きが必要
居住者に認められた場合、このメリットを享受するために払いすぎた税金を還付してもらうタックスリターンの手続きが必要です。
タックスリターンとは日本の年末調整にあたりますが、日本と違うのは時期。オーストラリアの会計年度は7月から翌年6月までになります。
タックスリターンはインターネットで自身で行うこともできますが、手数料を支払ったとしても結構な額が返ってくることが多く、現地の税理士に依頼している方が多いです。
また、日本の年末調整と同様に仕事で使用したものは経費として認められます。そのため、仕事で支払ったレシートはとっておいた方が良いです。
<必要書類>
- 銀行口座情報
- 必要経費のレシート(もしあれば)
- PAYG Payment Summary(すべての雇用主からの給料明細)
申請の期間は7月1日から10月31日ですが、税理士に依頼する場合は翌年5月15日まで認められます。申請期間が過ぎてしまった方は早めに現地の税理士へ相談する様にしましょう。
また、帰国後にインターネットでの申請も可能ですが、大変難しいので現地滞在中に現地の税理士へ相談しておくことをおすすめします。
2017年から申請開始と噂されたオーストラリアワーホリ35歳までの真相
2017年にはこのバックパッカー税以外にも大きな出来事がありました。2016年に政府の公式発表があり、2017年からワーホリビザの申請が35歳までになると言われたのです。
日本の留学エージェントも早くから35歳までのワーホリビザ申請受付などを始めるところも出てき始め、期待は高まりましたが、結果施行されませんでした。
噂がたってからすでに5年以上経過していますが、動く気配はなく、オーストラリアワーホリが30歳までというのが変わることはなさそうです。
まとめ
2017年にワーホリメーカー向けに導入されたバックパッカー税について詳しくお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。
一見税率が下がったかの様に見え、実は2017年以降ワーホリへの税率は実質増税になっていたんですね。
しかし、2021年のイギリスワーホリメーカーの裁判勝訴を受け、ワーホリでも居住者税率を認められるチャンスもあります。手続きは少し煩雑ですが、数千ドル戻ってくるかもしれないと思えばやってみる価値ありです。
また、2017年頃に施行されると噂があったオーストラリアワーホリ35歳までというのも、ここまで年月が経つと難しそうです。ワーホリは30歳までの年齢で計画していきましょう。