イギリス料理と言えば、思い浮かぶのは「フィッシュ&チップス」でしょうか。少しツウな人だと「ローストビーフ」や「イングリッシュ・ブレックファスト」なども思い浮かぶかもしれませんね。
しかしイギリスには、まだまだ忘れてはならない代表的な料理があります。それが今回ご紹介する「パイ料理」。「パイ」と言っても、日本人が想像するようなパイとはちょっと違うかもしれません。
この記事ではイギリス料理の代表格であるパイ料理について、その定義や種類をご紹介します。イギリス料理は美味しくないと思っている人も、パイ料理なら気に入るかもしれませんよ。
1.イギリスのパイの定義
イギリスで言う「パイ」は、日本とは少々定義が違うかもしれません。また、同じ英語を話す国であるアメリカと比べても、その定義にはズレがあります。
イギリスのパイと言えば、パイ生地にフィリング(具材)を包みこみ、オーブンで焼き上げたものを言います。この定義にあてはまっていれば、スイーツ系もおかず系も全部「パイ」となります。
日本でパイと言うと、甘いもののイメージが強くはありますが、「パイ生地にフィリングを包む」という点は、共通していますね。
しかしイギリスでは、マッシュポテトで蓋をしたものもパイと呼ばれます。これは日本やアメリカでは見られない定義です。
ちなみにアメリカでパイと言うと、パイ生地の上に何かが乗っているもののことの模様。たとえば、日本ではタルトと呼ばれそうなケーキが、アメリカではパイと呼ばれていたりします。
また、切り分けていないピザのことを、「ピザパイ」と呼ぶこともあるのだとか。
同じ英語を使う国でも、このような違いがあるため、何をパイと呼ぶかは渡航した国によって使い分けが必要そうですね。
マッシュポテトでもパイと呼ばれるのはなぜ?
基本的にイギリスでは、パイ生地に具材が包まれているものを「パイ」と呼びますが、後述するシェパーズパイやフィッシュパイでは、マッシュポテトがパイ生地の代わりのように使われています。
ではなぜイギリスではマッシュポテトでもパイと呼ばれるのでしょうか。
これはイギリスでパイ料理が広まっていた頃、パイ生地が贅沢品だったことに由来しているそうです。じゃがいもは当時からも安価で、庶民の食べ物として流通していたため、パイ生地の代わりとして使うのにうってつけだったのですね。
しかも、イギリス人にとってじゃがいもは主食のような存在。具材と一緒に食べることに、全く抵抗がなかったのでしょう。
そんな背景もあり、パイ生地が手軽に作れたり、買えたりするようになった現代でも、シェパーズパイやフィッシュパイはマッシュポテトが使われるまま形が残っています。
パイ生地を使う料理はハードルが高くても、マッシュポテトなら作れる!なんて人もいるのではないでしょうか。お料理をする人は、ぜひレシピを調べて家庭でも作ってみてくださいね。
2.イギリスのパイ:お食事編
ではここからは、イギリスのパイにどんなものがあるのか、代表的なものをご紹介します。まずは食事として食べられるものからピックアップしてみました。
Shepherd’s Pie(シェパーズパイ)
シェパーズパイは、羊の肉で作ったミートソースにマッシュポテトを被せて焼いたものです。英語で羊飼いのことをシェパードと言いますが、料理名はそこから来ています。
イギリスのパイの代表格で、イギリスでは電子レンジで調理して食べるような惣菜(レディミール)としても売られています。
Cottage Pie(コテージパイ)
コテージパイは、上記のシェパーズパイのお肉が牛肉になったもの。牛ひき肉と玉ねぎなどを混ぜたミートソースに、マッシュポテトが乗っています。
日本だと羊のひき肉は手に入りづらいですが、牛ひき肉ならスーパーに売っていますから、コテージパイなら手軽に作れるのではないでしょうか。
Kidney Pie(キドニーパイ)
キドニーとは腎臓のことですが、このキドニーパイはその名のとおり牛や豚の腎臓で作った煮込みがパイの中に入っています。
こちらはマッシュポテトではなく、パイシートで包んで焼くのが主流。腎臓が使われているため、やや癖がある味で、イギリスでも好き嫌いがわかれるパイです。
Fish Pie(フィッシュパイ)
フィッシュパイは、シーフードをクリーム系の味で調理して、マッシュポテトを被せて焼いた料理です。使われるのは、サーモンが圧倒的に多く、タラやえびなどが使われることもあります。
こちらも材料が手に入りやすいので、日本でも作りやすいイギリスパイのひとつ。ぜひ挑戦してみてくださいね。
Steak Pie(ステーキパイ)
ステーキパイは、パイ生地の中にビーフシチューが入ったパイです。パブで出されるパイ料理の定番でもあります。
家で作るというよりは、すでに出来上がっているものを家でオーブンで焼いて食べることが多いので、家庭料理とは言いづらいですが、こちらもイギリスではポピュラーなパイです。
Pork Pie(ポークパイ)
ポークパイはその名のとおり豚肉が入ったパイのこと。こちらはひき肉ではなく、小さく切った豚肉と玉ねぎやスパイスなどを合わせたフィリングが使われています。
それをパイ生地で包んだものがポークパイ。手のひらサイズの小ぶりなものも多いですが、お肉がゴロゴロ入っているので、なかなか食べ応えもありますよ。
Game Pie(ゲームパイ)
ゲームパイはポークパイとほぼ同じものですが、こちらはジビエ肉が入っています。ジビエとは、キジや鹿、うさぎなどの狩猟肉ですね。
お肉の種類によっては、ちょっとクセが気になるかもしれません。
Sausage Roll(ソーセージロール)
ソーセージロールは名前からして「パイではないのでは?」と思うかもしれませんが、こちらもイギリスではパイの仲間として位置付けられています。
ソーセージをパイ生地で包んで焼いたもので、存在的にはアメリカンドッグと似ているかもしれません。
ちょっと小腹が空いたときや、ささっと食べたいときにお腹を満たせるライトスナックです。
3.イギリスのパイ:おやつ編
イギリスのパイはお食事系だけではなく、おやつとして食べられる甘いものもたくさんあります。ここからは、甘いイギリスのパイもご紹介していきます。
Mince Pie(ミンスパイ)
甘いパイの代表格と言えばこちらのミンスパイ!「mince」というとひき肉のことですが、ミンスパイにひき肉は入っていません。入っているのは、細かく刻んだドライフルーツ。それをパイ生地で包んだものがミンスパイです。
特にクリスマスによく食べられるため、クリスマス時期のイギリスでは度々ミンスパイを見かけるでしょう。こぶりなものも多いですから、見つけたらぜひ食べてみてくださいね。
Apple Pie(アップルパイ)
アップルパイは、りんごが入ったパイですね。こちらは日本でも見かけますから、想像しやすいでしょう。
日本だと常温で食べることも多いアップルパイですが、イギリスでは冷凍のアップルパイをオーブンで焼いて食べるのが主流。ほかほかのアップルパイにバニラアイスクリームを添えるのが特に人気の食べ方です。
Lemon Pie(レモンパイ)
レモンパイはパイ生地にレモン味のカスタードをのせ、その上にメレンゲをのせて焼いたパイです。レモンパイは他のパイと違ってパイ生地でフィリングが覆われているわけではありませんが、頭にメレンゲが乗っているため、こちらもパイの定義に当てはまると考えられているのでしょう。
爽やかな甘味とふわふわのメレンゲが特徴的なパイ。日本ではなかなか見かけないので、イギリスで見かけたらぜひ食べてみたいですね。
Apple Crumble(アップルクランブル)
最後にご紹介するアップルクランブルは、パイ生地ではなくぼろぼろとした小麦粉の生地をりんごのリフィングにかけて焼いたお菓子のことです。
りんごのものが主流ですが、イギリスでは他の果実が使われることもあります。
アップルパイとはまた違った食感が楽しめるので、イギリスならではのパイが食べたい人におすすめのスイーツです。
4.イギリスでパイが食べられる場所
イギリスではさまざまな場所で多種多様なパイを手に入れることができます。ここからは、イギリスでパイが手に入る場所について解説します。
スーパー
一番手軽にパイ料理を手に入れられるのは、スーパーです。電子レンジで調理ができるものだと、フィッシュパイやコテージパイ、シェパーズパイなどが手に入りやすいでしょう。
パイ生地のものは冷凍惣菜として販売されています。オーブンで焼けば食べられますし、イギリスの家にはオーブンが設置されていることが多いですから、こちらも手軽でしょう。
冷凍惣菜では、お食事系のパイ料理のほか、スイーツ系も販売されています。
そのほか、お惣菜やペストリーカウンターが充実しているスーパーだと、すぐに食べられるお食事系・スイーツ系のパイが常温でも販売されています。
ベーカリー
ベーカリーで見るのは、スイーツ系のパイが多いでしょう。アップルパイはその代表格。
そのほか、ソーセージロールなど小さめのものなら、お食事系のパイが販売されていることもあります。
イギリス料理レストラン
イギリスの伝統料理のレストランなら、何らかのパイ料理があるはず!
パイ料理が多いレストランを選べば、家ではなかなか食べられないパイ料理に出会えるかもしれません。
もちろんデザートとしても、スイーツパイが提供されることもありますよ。
イギリス料理を提供するパブ
イギリス料理を提供するパブでは、フィッシュ&チップスやロースト料理が主流ですが、パイ料理を提供しているパブもあります。
本格的なパイ料理も多いですから、ビールを片手にパイを楽しみたいなら、パイ料理を提供するパブを探してみましょう。
5.イギリスに行ったらパイ料理を食べてみよう!
イギリス料理というと印象が薄い人も多いかもしれませんが、実はパイ料理にフォーカスすると、こんなにも種類があるんですね。スーパーで買えば値段も高くありません。
旅行や留学、お仕事などでイギリスに渡航される際には、ぜひさまざまなパイ料理を試して、お気に入りのパイ料理を見つけてみてくださいね。