イギリス旅行を計画している方、イギリスの映画やドラマを見ている方で、イギリス特有の「パブ文化」について詳しく知りたい方も多いでしょう。
日本人のイメージとして「パブはお酒を飲む場所」と認識されていますが、イギリスでは必ずしもお酒を飲む場所として使われているわけではありません。
スポーツ観戦、ファミリーの集い、テラススペースなど、パブごとにバラエティ豊かなコンセプトを持っており、誰でも楽しめるのが魅力です。
この記事ではイギリスのパブ文化について深堀して解説します。
これからイギリス滞在でパブ利用を検討している方、純粋にパブについて理解を深めたい方は、ぜひご覧ください。
1.イギリスのパブ文化について
まずはイギリスのパブ文化について理解を深めるために基本的な概要について解説します。
パブの由来
「パブ」の由来は、「Public House(パブリック・ハウス)」です。
日本語にすると「公共の家」を意味するパブですが、14世紀のイギリスでは「誰でも気兼ねなく入店できる酒場」として流行するようになったのがはじまりです。
昔は酒場として地元の人々に重宝されていたパブですが、時代の流れとともに老若男女がさまざまな目的で使える公共の家へと姿を変えていきます。
「庭が自慢なパブ」「ちいさな子どもを歓迎するパブ」「スポーツ中継が見られるパブ」など異なるコンセプトを持っていますが、誰でも入りやすい手軽さはかわりません。
イギリス人の中では、一滴もお酒を飲めないにも関わらず「パブの常連」という方も多数いるとのことです。
お酒が苦手な方でも楽しめるパブはたくさんあるので、ぜひイギリス滞在時は訪れてみましょう。
パブはイギリス全土に2.7万か所以上ある
2023年のIBISworldのリサーチによると、イギリス全土にパブは27,650か所あります。
この数値はパブビジネスが行われている件数のため、趣味のように細々と経営をしているちいさな田舎町などのパブはカウントされていない可能性が高いです。
「5万ヶ所以上ある」と明言しているメディアもあるのですが、とにかくパブの数が多いイギリスは、どんなにちいさな田舎町に行ってもパブだけは見つけられるでしょう。
ちなみにパブの数を2022年と比べると、約2%減少していることがわかっており、コロナや物価の高騰などさまざまな理由を背景に徐々に数が減っているのが現状です。
パブの数が多いと訪れる側としては選択肢の幅が多くて楽しいかもしれませんが、経営する側にとってはやっかいです。
実際にパブを経営する人たちは、熾烈な生き残りをかけて「Family(家族)」「Femailes(女性)」「Food(食事)」の3Fを大切にしています。
「イギリス料理はまずい」と一度は聞いたことがある方も多いかもしれませんが、料理に手を込んでいるパブに行けば、温かくて美味しい食事がいつでも食べられます、
パブとバーの違い
ここで気になるのが「パブってバーのことではないの?」という疑問です。
結論からお伝えすると、どちらも「お酒をたしなむ場所」として共通していますが、パブはイギリス発祥の文化であるのに対して、バーはアメリカ発祥の文化になっています。
ただし、「パブリック・ハウス」が由来になっているとおり、「お酒をたしなむ場所」以上に「人と交流・会話をする場所」としての役割が大きいです。
パブに行くだけで知り合いに会えたり、地元の歴史が感じられる空間になっているなど、まるで家に帰ったような安心感を感じられる点が魅力といえるでしょう。
親しみやすさでいえば「居酒屋」に近しい
ここまでパブの文化をお伝えしてお気づきの方もいるかもしれませんが、イギリスのパブ文化は日本の居酒屋文化に通ずるものがあります。
居酒屋は大きな都心から小さな田舎町まで多種多様なコンセプトで経営されており、常連客で賑わう店から旅行者に人気の店までさまざまです。
基本的にはお酒を飲む場所ですが、家族で来店できる場所も多くあるため、家族で利用したり、友人と利用したりできるのもパブと共通しています。
2.イギリスのパブの種類
数多くのパブがあるなか、イギリス滞在中に訪れるとなればどのような種類があるか把握しておくと場違いにならずに済みます。
イギリスのパブは、大体が以下の7種類に分けられます。
- The city pubs(シティパブ)
- Theme pubs(テーマパブ)
- The country pub(カントリーパブ)
- The detstination pubs(デスティネーションパブ)
- The local pub(ローカルパブ)
- The freehouse(フリーハウス)
- Chain(チェイン)
それぞれの種類について解説します。
The city pubs(シティパブ)
シティパブは、主に大きな都市のオフィス街にあるパブです。
ランチタイムや仕事終わりの時間に賑わい、ビジネスパートナーや同僚たちと訪れる人たちでいっぱいになる傾向にあります。
常に賑やかで、お酒を飲む人たちの会話や笑い声が響き渡るため、静かにゆっくりと過ごしたい方には不向きです。
また、会社勤めの人たちをお客さんにしているため、平日は閉店時間が早かったり、土日は営業していない場合もあるため、事前に調べておきましょう。
Theme pubs(テーマパブ)
テーマパブは、「ジャズ」「コメディ」「ロック」などコンセプトに合わせたテーマで営業しているパブです。
主に人が賑わう大都市にありますが、シティパブのように話し声や笑い声でさわがしく、人がいっぱいになることはほとんどありません。
アーティストやコメディアンなどスペシャルゲストを招くような日もあるため、テーマに沿った趣味を持っている方は、いい時間を過ごせるでしょう。
ただし、マップ上に位置情報は記載されても公式サイトなどが用意されてないケースも多く、情報収集はSNS等をうまく活用する必要があります。
The country pub(カントリーパブ)
カントリーパブは、小さな町などでたびたび見られる古くて趣の感じられるパブです。
観光客向けのガイドブックでもたびたびカントリーパブは紹介されていますが、イギリス特有の医師やレンガで作られた古民家風の外観が特徴的です。
日本は「木造建築であること」と「自然災害が多いこと」が理由で築年数の古い建物は限られています。
一方、イギリスは「劣化ペースの遅い石やレンガで作られていること」「自然災害が少ないこと」「古い建物を大切にする文化」が理由で多くの古い建物が残っています。
イギリス滞在中に古いパブを見つけると「雰囲気が良いかも」と感じて中に入る方も多いですが、カントリーパブは食事が美味しくないことが多いため注意が必要です。
最近では集客目的で食事に力をいれるパブも増えていますが、小さな町にある数少ないパブは、競合パブがなく、昔からの経営方針が変わっておらず、電子レンジで温めた食事が出てくることも少なくありません。
ローカルの雰囲気を楽しみながらお酒を飲みたいのであれば満足できそうですが、食事のクオリティを重視するのであれば事前に口コミを確認しておきましょう。
The detstination pubs(デスティネーションパブ)
デスティネーションパブは、主に小さな田舎町にあり、遠くからの旅行客やドライブで疲れを癒したい人たちの場所として活用されるパブです。
カントリーパブ同様に歴史の古いパブが多く、昔から「軽食を摂りたい」「一服したい」と疲れ切った人々の心と体を癒す場所として使われてきました。
食事やお酒の質が高いとは限りませんが、レストランやカフェなどがない町でもポツンとパブが営業している可能性があるので、利便性は高いでしょう。
The local pub(ローカルパブ)
ローカルパブは、名前のとおり地元に根付いたパブです。
パブの大きさもさまざまで、パブによって年齢や性別にばらつきがあったり、地元の常連さんたちの独特な雰囲気が感じられるのが魅力です。
ただし、パブによっては地元以外の人、旅行客や外国人、一見さんの来店を拒否したり、いい接客をしてくれない場合もあるため気をつけましょう。
とくにイギリス人の性格として、仲良くなるまでは不愛想であったり、シャイな一面があったりするため、事前に「断られる可能性がある」と理解しておくと安心です。
すべてのローカルパブが一見さんに冷たいわけではなく、純粋に外国人や旅行客と話がしたいと声をかけてくる場合もあります。
常連以外のお客さんに対する接客が良いか悪いか、口コミで確認できるようであれば見て判断しましょう。
The freehouse(フリーハウス)
フリーハウスは、多種多様なビールやお酒が飲めるパブです。
「フリー」と聞くと無料で飲めるのかな?と考える方もいますが、無料で飲めるパブというわけではありません。
日本の居酒屋でビールのメーカーと契約している場合は、アサヒやキリンなど特定のビールしか注文できないところがあるように、パブでも同じようなシステムがあります。
特定のお店と契約しているパブの場合、決められたビールや特定の銘柄のお酒しか提供してもらえませんので、こだわりの強い方は「これは飲めないんだ…」と残念に思うかもしれません。
一方、フリーハウスは「特定のメーカーと契約していない」ことを公表しているため、たくさんのお酒が用意されており、自由にカクテルを作ったり、複数の種類のビールを飲み比べできます。
Chain(チェイン)
チェインは、駅の構内やショッピングセンター、街の中心でたびたび見かける大衆向けの安価なパブです。
大量生産・大量消費のシステムのため、必ずしもハイクオリティのお酒や食事が楽しめるとは限りませんが、総合的に安価な価格設定で時間潰しに訪れる方も多いです。
場所によってはパブのカウンターでビールを飲みながらPCを開いて仕事をしている人もいるほど、さまざまな用途で利用されています。
わざわざイギリスに来て「チェインに行こう!」とはならないと思いますが、スケジュールの合間に時間が余れば訪れてみるのも良いでしょう。
3.事前に知っておくべきイギリスパブのマナー
イギリスに滞在するのであれば、1度はいきたいパブですが、マナーを理解していないと恥ずかしい思いをしたり、店員さんから怒られてしまう可能性があります。
とはいえ、独特なマナーがたくさんあるわけではありませんので、基本的に知っておくと安心な要点についてみていきましょう。
- カウンターで注文・支払い・受け取りまで済ませる
- チップの用意は不要
それぞれのマナーについて解説します。
カウンターで注文・支払い・受け取りまで済ませる
ファミリー向けや食事がメインのパブなど一部は異なりますが、基本的には席を確保してからカウンターで注文・支払い・受け取りをすべておこないます。
複数人でパブを訪れる場合は、1人ずつ注文するのではなくグループの代表がまとめて注文と会計を済ませるのがマナーです。
1人ずつ細かく対応していると時間のロスになり、お店が混雑したり、店員さんの手間が増えてしまうからです。
またパブによっては「列に並んで注文する」習慣がないことも多く、自分から混み合うカウンターに行き、大きな声で注文しなければならない場合もあります。
順番を待てば注文できる日本文化に慣れていると戸惑うかもしれませんが、異文化を体験することを楽しみながら注文してみましょう。
チップの用意は不要
基本的にイギリスのパブではチップは不要です。
実際にカード決済の場合は、チップ料金を書き込む欄が記載されないケースがほとんどですので、現金の場合もお酒や料理代のみを支払うようにしましょう。
ただし、現金の場合9.40ユーロの支払いで10ユーロを出すケースでは、基本的にはお釣りを貰わないのが一般的です。
お釣りを要求してはいけないわけではありませんので、必要であれば用意してもらいましょう。
コロナ禍を経て、カードオンリーの決済方法を導入しているパブが増えているので、カードがあれば決済トラブルのリスクは最小限に抑えられるでしょう。
4.まとめ
この記事ではイギリスのパブ文化について基本的な概要、パブの種類、注文時の注意点についてお伝えしました。
イギリスのパブはアメリカ発祥のバーとは明確な違いがあり、文化的背景や地元の人の感覚としては日本発祥の居酒屋に近いことがわかりました。
イギリス全土のどんなに小さな田舎町でも見つけることができるパブは、地域やお店ごとに雰囲気やこだわりがガラリと異なるので、複数行って比べてみるのも楽しいでしょう。
とくに「これをやってはいけない」などの厳しいルールはありませんので、わからないことがあればその場で聞いて、お酒や料理を楽しみましょう。