アメリカの教育制度は日本と似ているようで、実は違うところが多くあります。日本の学校制度が全国統一なのに対し、50の州により構成される連邦国家アメリカでは、各州・学区によって制度が異なり、その内容もさまざまです。
日本の6-3-3制の教育制度は戦後アメリカにより導入されたものですが、当のアメリカの教育制度はそこから大きく変化し、現在では例外はあるものの5-3-4制が一般的です。義務教育期間も日本の9年間に対し、アメリカでは12年間と違いがあります。
今回は、アメリカへの留学の種類と、アメリカの義務教育について紹介します。アメリカ留学への準備は、まずアメリカの教育制度をしっかり理解し、自身の留学の目的を明確にすることから始めましょう。
1.アメリカへの留学の種類
留学をするにあたって一番大切なのはその「目的」です。語学の上達のためなのか、学位を取りたいのか、音楽や芸術など特定のジャンルを学びたいのか、その目的は一人ひとり違います。
語学留学
・短期語学留学
学校の夏休みや仕事の休暇期間を使って留学をしたい人におすすめです。日本で勉強した英語を実際に使ってみて自信をつけたい人や、異文化の中に飛び込むことで視野を広げたい人に適していると言えるでしょう。
アートやダンスのコースを受講しながら英語を学べるプログラムもあり、その選択肢はさまざまです。また、将来長期留学を考えている人はまず短期留学をしてみることで具体的なイメージを持つことができ、モチベーションアップに効果的です。
・中期~長期語学留学
日常英会話を流暢に話せるようになりたい人、TOEICで高得点を狙いたい人、ビジネスの場面で自信を持って英語を使えるようになりたい人におすすめの留学期間です。
将来的にアメリカの大学へ進学を考えている場合は、大学付属の語学コースへ通って進学のために必要な英語の試験を受け、入学を目指すことも可能です。
また、地域活動に参加できたり、日本では出会わないような価値観を持った多様な人々に出会えたりするのも、長期滞在の魅力です。
中学生・高校生の留学
国際的な人材育成が求められている中、早いうちから英語の取得や将来の進路のために留学を考える人も少なくありません。
中学生や高校生での留学は高等教育での留学とは違ったルールやプログラムになっているので、留学先・日本で在籍中の学校・留学エージェント・教育委員会などと念密に連携を取り、留学後の進路まで見据えた計画を立てましょう。
手始めにサマースクールや語学留学などを短期間経験し、子供の様子を見ながら親子ともに納得のできる長期留学プログラムを組むことをおすすめします。
高等教育への留学
大学・大学院で学ぶための留学です。アメリカの大学はリーダー育成に重きを置いており「分析力」「判断力」「決断力」を身につけるための場所であることを理解しておきましょう。
大学院は専門的な勉強をする場所で「修士課程」と「博士課程」に分類されます。博士課程では将来の大学教員の育成や研究者の養成を目的としていて、修士課程を経て博士課程で勉強・研究を続ける流れが一般的です。
・交換留学
日本の在籍大学と提携を結んでいるアメリカの大学に留学するプログラムです。留学中に取得した単位が日本の大学の単位として認められるので、日本の大学の卒業時期に影響が出ません。日本の大学からのサポートが手厚く、前例も多いので、安心して留学に臨めます。
・正規留学
入学時点から現地の学生と肩を並べ卒業を目指します。大学には「2年制大学」と「4年制大学」があり、それまでの学業の成績・課外活動の実績・英語力をもとに入学審査が行われます。
大学院への入学ではさらに自己PRや推薦状を準備する必要があります。正規留学を目指すには、日本にいる時からの情報収集と入念な準備が不可欠です。
・MBA留学
経営学に特化した大学院への留学プログラムです。このプログラムは「限られた時間と情報の中で理論的に意思決定をし、効率よく会社を経営できるビジネスパーソン」の養成を目的としています。
一般的には日本で社会人経験を積んでから留学し、経営学修士の学位取得を目指します。留学前には英語で基本的な経済学・会計学・統計学を予習しておきましょう。
2.アメリカの義務教育 K-12
アメリカの義務教育期間はK-12と呼ばれています。キンダーガーテンの最初の年がK、ハイスクール最後の年が12です。このK-12期間中の義務教育は原則的に無償です。
各州は、連邦政府によって定められた教育スタンダードをもとに教育課程の指標を定めており、学区や学校は州のガイドラインの範囲内で授業内容を決めるようになっています。
日本の学校では毎年1学年ずつ進級していくのが当たり前ですが、アメリカでは義務教育中であっても留年・飛び級をする生徒もおり、子ども一人ひとりの能力に合わせた教育を重視していることがわかります。
幼稚園 Kindergarten(キンダーガーテン)
多くの場合、満5歳の9月から通い始めます。通うのは1年間です。集団生活の中で、一定のリズムで生活することに慣らしていく期間です。コミュニケーション能力を培い、学習の基礎となる文字や数字に触れ、小学校生活をスムーズに始められるように準備することを目的としています。
小学校 Elementary school(エレメンタリースクール)
6歳から10歳の子供が通います。科目の種類は日本と大差ありませんが、英語と算数の配分が高くなっています。
また、近年日本でも普及してきたSTEM(STEAM)教育には2000年代初頭から力を入れています。これは暗記型に偏った教育では得られない「問題解決能力」「情報処理能力」「根拠を持って決断を下す力」を身につけることこそが、21世紀の世界を生き抜くのに必要だという信念に基づいた教育手法です。
中学校 Middle school(ミドルスクール)
11歳から13歳の子供が通います。必須科目の国語・算数・理科・社会・体育(または外国語)の他に選択科目を学び、授業の内容も高度になってきます。
日本と違って中学校には担任の先生が存在しないので、生徒の生活面や学習面の管理および進路相談は、生徒ごとに割り当てられたカウンセラーが担当します。
高校 High School(ハイスクール)
14歳から17歳の子供が通います。高校も義務教育のアメリカでは高校受験はなく、地域にある高校が割り当てられます。授業は単位制で、卒業までに必要な単位を取る必要があります。
授業はディスカッションやディベート中心になり、プレゼンテーションをする機会も少なくありません。。宿題のほかにレポートやエッセイの課題も多く、大学進学を見据えた授業内容になっています。
高等教育
アメリカの高等教育には、コミュニティカレッジ・大学・大学院があり、その他に特定の職業に就くための技術訓練を行う職業学校があります。日本の大学が学部ごとに入試試験を儲けているのに対し、アメリカでは大学で一本化された入学審査方式を取っています。
アメリカの大学は、日本の大学と同じく4年間の単位制です。授業では学生が中心になり、教授や他の学生たちとディスカッションを重ねるアウトプット形式が多く取られます。専門的な分野は大学院で学ぶとされており、大学ではリーダーの育成に焦点を当てられています。
3.アメリカの教育で勉強以外に学べること
アメリカで教育を受けることのメリットは、学問だけではありません。移民によって始まり今もなお移民によって支えられている国家アメリカでは、自分の常識が他のクラメイトの常識と異なることが珍しくありません。そのような環境の中、教育現場では「民主主義を守れる国民の育成」を目的に、日々様々な工夫がされています。
多様性への理解
多様性という言葉が近年日本でもよく聞かれるようになりましたが、アメリカでは日本のそれとは比べ物にならないような特徴・特性を持つ人びとが多く存在します。
アメリカの学校では、幼少期から自分のアイデンティティを認識し、他者とは違うことを理解し尊重する教育を行っています。
リーダーシップ
アメリカは良くも悪くも実力主義です。日本のように協調性に重きを置かれることはありません。他者と恐れずに意見交換をし、交渉し、友好関係を築いて目的に向かって進んでいける力こそが社会に求められる力なのです。
そのため教育現場では、ディスカッションやディベート、プレゼンテーションを多く取り入れ、学習に対する自発的な姿勢を評価するシステムができています。
ボランティア
アメリカでは子供であっても、社会に貢献することの意義を教えています。子供達はボランティア活動を通して社会の一員としての権利や義務を学び、主体性を持って物事に取り組む力を育みます。
ボランティア活動は大学の入学審査で評価されることもあるので、学生たちは社会のために自分が何をできるのか、その中でどう人として成長できるのかを主体的に考えなら活動を計画していきます。
4.まとめ
アメリカ留学成功のために重要なのは、アメリカの教育制度を理解し、自身の明確な留学目的に沿ったプログラムを選ぶことです。
留学で得られるものは学問だけではありません。アメリカで見聞を広げ、国際人としての教養を身につけることによって、今後の人生が豊かになることは間違いないでしょう。