ワーホリや海外留学が決まって長期的に日本を離れることになるのであれば、住民税や年金などの日本で収めるべき税金がどうなるか気になるでしょう。
海外に引っ越しをするだけでもたくさんの費用がかかるので、無駄な出費は抑えたいと考えているのであれば、まずは税金問題と向き合い、どうするか決める必要があります。
また、必要な手続きをせずに海外に行ってしまうと、委任状を用意して家族に手続きしてもらう羽目になったり、滞納トラブルにつながるリスクもあるため要注意です。
本記事では、ワーホリや海外留学に行く方に向けて、海外に長期滞在する場合の住民税やそのほかの税金について解説します。
1.ワーホリに行っても住民税は払い続けるの?
結論からお伝えすると、ワーホリに行っても住民税の支払い義務は生じるケースがほとんどです。
基本的に、海外に長期滞在するのであれば「海外転出届」を提出して、住民票を除票することになるので、海外にいる間は住民税の対象外となるのが一般的です。
それでは海外にいる間は一切の住民税が発生しないのかというと、そうではありません。
住民税は毎年1月1日の時点で、日本国内に住民票が記録されている人たちが課税対象となり、住民税の支払額は昨年の所得によって決定します。
つまり、海外転出届を提出したとしても昨年の所得に対する住民税の支払いは義務付けられているので「ワーホリに行けば住民税がかからない」というわけではありません。
オーストラリアなどワーホリ協定国の一部では、1年以上の長期滞在が認められているので、海外転出届を出して1月1日を跨いで1年以上経つと、住民税0円になる可能性があります。
しかし、住民税0円になるのは、長期滞在しているごく一部のワーホリ利用者に該当する話ですので、基本的には住民税の支払いは必要と認識しておきましょう。
海外転出届とは?
海外転出届とは、海外に長期間移住する予定がある人が「住民票を抜く」手続きです。
渡航する2週間前から申請手続きができて、現在住んでいる場所の最寄りの市区町村の窓口にいくと、対応してもらえます。
日本に帰ってきたときに日本に住民票を登録する作業が必要になるため、役所での手続きがめんどうに感じるのであれば、必ずしも海外転出届を出す必要はありません。
ただし、海外転出届を出すことによって「国民年金」と「住民税」の支払いがなくなるので、節税対策をしたい人はやっておいた方が良い手続きとなります。
実際に、国民年金と住民税の支払い義務がなくなることによって、数十万円ほど税金の負担が減るという事例もあるので、事前に確認しておきましょう。
手続きがめんどうなどの理由で海外転出届をださなかった場合、「日本国内に住んでいる人」という扱いになり、国民年金・健康保険・住民税の支払い義務が生じます。
ちなみに、先ほど「住民税の支払いが必要」とお伝えしていますが、それは海外に移住したときに請求される住民税は昨年度の収入のものだからです。
1年で日本に帰国した場合、海外に移住していた期間の住民税がかからないので、帰国して1年目は住民税が発生しないということになります。
帰国して2年目以降は、通常どおり、収入に応じた住民税が発生するので注意が必要です。
2.国民年金
国民年金は、日本国内に住む20歳〜60歳未満の人たちが加入する公的年金制度です。
基本的には、会社に属していないのであれば「国民年金」、会社に属しているのであれば「厚生年金」に加入することになるでしょう。
そしてワーホリに行く人であれば、よほど特殊な理由がない限り、国民年金に加入していることになるので、海外転出届を出さない限り、海外にいても支払い義務が生じます。
海外転出届を出すことによって「国民年金の支払い義務」はなくなります。
日本国籍を持っている場合は「国民年金の任意支払い」が可能で、希望するのであれば海外にいる間も国民年金を払い続ける選択もできるのです。
しかし、ここまで読んで多くの方は「わざわざ年金を払い続けるメリットなんてないでしょう?」と考えているのではないでしょうか。
もちろん、義務でないので払わない方法を選択することもできますが、公的年金制度は「納付額」に応じて「付与額」が決定します。
つまり、20歳〜59歳までの間ですべて満額で支払った人と、海外転出届を出して満額支払わなかった人では、年金給付額は異なります。
納付額が少なくなるということは、将来給付される額が減るということを理解しておきましょう。
国民年金の現状やワーホリでどれほど安定した収入が得られるかわからない状況を踏まえて、国民年金の任意支払いを続けるかどうかは検討しましょう。
国民年金に加入しない場合の手続き
海外転出届を出したうえで、国民年金に加入しないことを決めたのであれば、住んでいる場所の市区町村の窓口で手続きが必要です。
国民年金は毎月16,520円(税込)かかるので、年間198,240円(税込)分の納付額を節約できるので、資金が少ない中でワーホリを検討している方は負担を減らせます。
ただし、納付額が少なくなる分の将来的な給付額の減少リスクがある点のみ、理解しておきましょう。
国民年金の任意加入をする場合の手続き
海外滞在中も国民年金に加入することを決めたのであれば、2種類の方法からご自身に適した方を選びましょう。
- 任意加入(海外転出届を出して任意加入する)
- 強制加入(海外転出届を出さない)
任意加入の場合、海外転出届を出したうえで国民年金の支払いを続けるというものです。
基本的には強制加入から任意加入に移行するのみですので、海外転出届のみが申請されていれば、そのほかに具体的な手続きは必要ありません。
「国民年金の支払いを続けるから、住民票も抜かなくていいや」と考えているのであれば、海外転出届を出さずに国民年金を払い続ける方法もあります。
海外転出届を出さないということは、国民年金の支払いは義務ですので、とくに手続きをすることなく支払いが続きます。
海外に滞在している期間中も国民年金を払い続けることによって、将来の給付額が安定するという点は安心です。
ただしワーホリ先でうまく就職先が見つけられずにいると毎月16,520円(税込)の国民年金の支払いが大きな負担になる可能性があるので注意が必要です。
国民年金は、1年間や2年間を一括払いすると割引が効くので、海外滞在中の経済的な不安を解消したいのであれば一括払いの制度を検討しましょう。
3.国民健康保険は払い続けるべき?
国民健康保険は、日本国内の医療機関で発生した医療費の一部を負担してもらえる制度であり、日本に住んでいればお世話になることも多いでしょう。
海外転出届を申請することで、国民健康保険の支払い義務はなくなりますが、海外転出届を申請しなければ、国民健康保険の支払いが義務のままです。
ちなみに、海外に滞在していても日本の国民健康保険に加入していると、一部の医療費を負担してもらうことができます。
ただし、日本と比べて海外の医療費は高額であり、日本の医療機関ほど高額な負担をしてもらえないため、多くの移住者は国民健康保険を支払わない選択をしています。
海外で病気や怪我が心配な方は、海外旅行保険や留学保険、ワーホリ保険など、現地で使える振れ幅の多いプランに加入するのがおすすめです。
4.在留届とは?
日本のパスポートは、国や地域によって異なるのものの最大3ヶ月間滞在が許可されていますが、それ以上の滞在をする場合は在留届の提出が義務です。
在留届は、現在住んでいる場所の管轄範囲である日本大使館もしくは総領事館が手続き場所となっています。
役所に行かなくても、オンライン申請、郵送、FAXなど複数の方法で提出ができるので、時間がない方はこれらの方法を利用しましょう。
在留届を提出することによって、海外で震災や事件が発生した際に、日本国大使館もしくは総領事館から日本語で情報を受け取ることができます。
語学力に自信がない場合、現地でのトラブルに見舞われると不安になる方も多いでしょう。
最近では、テロや銃乱射など多くの問題が勃発しているので、何かのトラブルにすぐ対処できるようにするためにも、忘れずに在留届を提出してください。
5.日本で使っているスマホはどうするべき?
海外に長期滞在することが決まっていた場合、普段使っているスマホをどうするべきか悩んでいる方もいるでしょう。
スマホの基本料金は、データ通信の使用量や通話時間を問わず請求されるものですので、解約しないと毎月引き落としされてしまいます。
そのため、海外に長期滞在するのであれば、スマホ問題も解決しておく必要があります。
日本国内で使用しているスマホの対処法は、以下のとおりです。
- 日本国内のプランを継続して利用する
- 今のスマホを解約して現地でスマホプランに加入する
- 日本用と海外用を2台持ちにする
今のスマホを解約してしまうと、電話番号が使えなくなってしまうという大きなデメリットを理解したうえで、それぞれの対処法について解説します。
日本国内のプランを継続して利用する
最近では、追加料金なしで海外でもデータ通信が利用できる基本プランを提供している会社が出てきました。
日本国内のプランを継続して利用できれば、現地でスマホの契約をする手間がかからず、現在使用している電話番号を使い続けることができます。
英語力に自信がない方、渡航前後の手間を最小限に抑えたい方は、とりあえずは日本国内のプランを利用してオーストラリアで利用するのがおすすめです。
ただし、日本の番号を使用すると「海外通話」になるため、通常よりもスマホ料金が高くなる可能性があるため注意が必要です。
今のスマホを解約して現地でスマホプランに加入する
オーストラリアでは、テルストラ(Telstra)、オプタス(Oputus)、ボーダフォン(Vodafone)の3社が主流です。
現在使用しているスマホの基本料金を払い続けるのは無駄と感じるのであれば、現在のスマホは解約して、オーストラリアの携帯会社と契約するのがおすすめです。
現地で使われている通信会社であれば、日本で契約した通信会社よりも高速で使えて、トラブルが起きても現地で対処してもらえます。
ただし、スマホを解約すると今まで使用していた番号が停止されて、再利用できなくなるので注意が必要です。
日本用と海外用を2台持ちにする
現在、日本で使用しているスマホの番号を残しておきたいのであれば、日本用とオーストラリア用で同時契約する方法があります。
日本国内で提供している海外向けデータ通信サービスは、回線が不安定な可能性が高く、オーストラリアの田舎に行くと圏外になるリスクも伴います。
インターネット通信の環境をしっかりと整えたいのであれば、現地の通信会社と契約するのが安心です。
とはいえ、日本の電話番号を停止・破棄してしまうと困ってしまう方も多いでしょう。
そこで、日本国内の基本料金を最安値のプランに変更して、現地の通信会社と契約すれば、最小限の費用で「既存の電話番号」と「通信環境」の2つの問題を解決できます。
6.まとめ
本記事では、ワーホリに行く場合に住民税の支払いが必要かどうかについて解説しました。
結論として、海外転出届を出すことによって住民税の支払い義務はなくなりますが、昨年度の収入に対する支払いは必要ですので、海外滞在中に請求される可能性はあります。
そのほか、海外転出届をだすと、「国民年金」「国民健康保険」などの支払い義務が任意に変わるので、経済的な負担を軽減できます。
ただし、任意支払いをしないことによって生じるデメリットもあるので、必ずご自身の状況や将来を見据えて、どちらが適しているかを選択しましょう。