英語にはさまざまなイディオムやスラングがあります。今回ご紹介する「kick ass(キックアス)」も、そんなスラングのひとつです。
ですが、kick assというスラングに馴染みがない人も多いのではないでしょうか。
自分では使うことはないかもしれませんが、ネイティブスピーカーの中にはよく使う人も多いkick ass。意味や使い方を知っておけば、英語でコミュニケーションを取っているときや、海外ドラマ・映画などを見ているときに戸惑うことがなくなるかもしれません。
この記事ではkick assの意味や使い方、注意点について解説します。スラングに興味がある人は、ぜひ参考にしてくださいね。
【目次】
1.Kick ass(キックアス)の意味とは?
まずはkick assの意味からご紹介しましょう。
直訳すると「お尻を蹴る」となるこちらの言葉。スラングとしての意味は2通りあります。1つは動詞的使い方と、1つは形容詞的使い方。どちらもよく使われるスラングですから一緒に覚えてしまいましょう。
動詞として使う場合の意味
Kick assを動詞として使う場合、「打ち負かす」「ボコボコにする」「勝つ」のような意味があります。また、使い方によっては「負けた」になることも。
「ボコボコにする」はkick assの本来の意味の「お尻を蹴る=ケツを蹴飛ばす」に似ていますから、なんとなく掴みやすいでしょう。
たとえば、下記のような感じで使います。
例文:
I’ll kick your ass if you ever show up.
(もしまたお前が現れでもしたら、ボコボコにしてやる=ぶっ飛ばしてやる。)
こう言っている場合、本当にお尻を蹴るのか、それともボコボコにするという意味なのか悩んでしまうかもしれませんが、こう言っている場合は、ボコボコにするという意味になりますので、誰かにこんなことを言われたら警戒してくださいね。
そしてもう1つの「打ち負かす」「勝つ」「負けた」という意味の場合は、以下の様に使います。
例文:
I want you to kick his ass.
(彼を打ち負かしてほしいんだ)
He kicked my ass badly.
(彼には完全に負けたよ)
この例文からもわかるとおり、勝ち負けの話をするときには、「kick + 対象人物の所有格 + ass」という形で文章を作ります。途中に挟まる対象の人物が負けている方です。
ですから、kick my assというと、自分が負かされたという意味になるのですね。
形容詞として使う場合の意味
形容詞としてkick assを使う場合は、「kick-ass」と途中にハイフンを挟むことが多いです。意味は前述のボコボコにする、打ち負かすなどとは違い、「かっこいい」「すごい」「最高」など、誰かを賞賛するような言葉になります。
前述の動詞の意味からかけ離れているように思うかもしれませんが、動詞のkick assが持つ「誰かを打ち負かす」という意味が転じて、「誰も勝てない」「誰も敵わないほどすごい」ということで、kick-assは良い意味になるわけです。
使い方はシンプルで、下記のような感じです。
例文:
That song is real kick-ass.
(あの曲はマジかっこいいよ)
賞賛の言葉であるkick-assですが、こちらもスラングですからお行儀の良い言葉ではありません。上記の日本語訳から、そのニュアンスや言葉の雰囲気も感じとりつつ、意味を覚えておきましょう。
2.Kick ass(キックアス)を使うときの注意点
Kick assはよく使われるスラングではあるものの、使い方に非常に注意が必要な表現でもあります。トラブルを避けるためにも、kick assを使うことには慎重になった方が良いでしょう。
ここからは、kick assを使うときの注意点について解説していきます。
Kick assはやや下品なスラング
スラングにはさまざまな種類があり、子どもや外国人が使ってもそれほど不自然ではないものもあります。ですから、スラングのすべてが良くない言葉というわけではありません。
しかし今回ご紹介しているkick assはスラングの中でも、お行儀の良くない、ちょっと乱暴かつ下品なスラングです。そのため、このスラングを使うのが合っていない人もいるでしょうし、使う相手も選ばなければなりません。
こうしたやや下品なスラングは、その感覚が掴めるまでは使わないようにするのが安心。ひとまずは意味だけ知っておいて、ネイティブスピーカーたちがどのようにこの言葉を使っているかを確かめておきましょう。
もしも自分が使っても大丈夫だと自信が持てるなら使ってみても良いでしょう。しかしその際には、目上の人や知り合ってからあまり時間が経っていない人に使ってしまわないよう、くれぐれも気をつけてくださいね。
ビジネス・フォーマルシーンでは厳禁
繰り返しになりますが、kick assは決してお行儀の良いスラングではありません。ビジネス・フォーマルシーンでも使っても問題ないスラングも中にはありますが、kick assはそうした場面では使ってはいけません。
普段から使い慣れていると、ビジネス・フォーマルシーンでも、ついつい使ってしまう人もいるかもしれません。ですが、ビジネス・フォーマルシーンでkick assなんて言葉を使うと、非常に失礼にあたりますから、ついつい癖で使ってしまう……なんてことがないようにしてくださいね。
意味が伝わらない場合も……
ネイティブスピーカーなら、ほとんどの人がkick assの意味を知っているでしょう。しかし、年配の方や英語が上手な外国人の場合はそうとも限りません。
もしかすると、「ボコボコにする」「打ち負かす」のkick assしか知らない場合もあります。
そんな人に「kick-ass」を良い意味で使ってしまった場合、逆に悪い意味としてとられてしまうこともあるかもしれません。
ですから、ネイティブの友達以外にkick assを使う場合は要注意。相手が意味を知っていることを確認してから使うのが無難でしょう。
イギリスではarseとなる
Kick assはアメリカ的なスラングですが、イギリスでももちろん通じます。しかしイギリス式のスペリングの場合、assはarseとなります。また発音も「アース」という感じに伸ばします。
今回この記事でご紹介している「ass」の部分は、イギリスではすべて「arse」となるといこと。なかなかこの言葉を書くことはないかもしれませんが、知識として覚えておくと良いでしょう。
ただ、イギリスでもassを使ってもちゃんと伝わります。相手によって使い分けなくても、イギリス人がこの言葉を発音したときや、書いてきたときに、理解できればOKです。
3.Kick assに似た言葉
Kick assには、字面や語感が似た言葉がいくつかあります。それらの言葉は、kick assと同じ意味を持つのでしょうか。それとも、全く違う意味になるのでしょうか。
ここからは、kick assに似た2つの言葉の意味や使い方をご紹介します。
Ass-kicker
Ass-kickerと言われると、kick assをする人ということで、何かすごい人を思い浮かべるかもしれませんね。
ですがass-kickerは、誰かをぶっ飛ばす人のこと、つまり暴力的な人のことを指します。
形容詞のkick assとはちょっと意味が異なりますから、混同してしまわないように注意が必要です。
Ass-licker
Ass-lickerとは、自分の利益を得るために、誰かのことを調子良く煽てたりする人のことです。日本語だと「ごまをする人」と言われますが、英語だと「お尻を舐める人」になるのですね。
こちらも侮辱言葉ですから、使いすぎたり、使いどころを間違ってしまうのは危険。仲間内でも冗談でいうくらいにとどめておきましょう。
Kiss my ass
Kick assよりも、もしかするとこちらの「kiss my ass」の方が使われているのをよく見るかもしれません。
こちらのスラングは「ふざけるな!」「くたばれ!」というような意味になる、相手を侮辱するスラング。かなり乱暴なニュアンスのある言葉ですから、使い所には気をつけましょう。
ただこのスラング、海外ドラマや映画、曲などの中でよく使われているので、聞く機会は多いかもしれません。
4.Kick ass(キックアス)は適したタイミングで使おう
Kick assというのは、ネイティブスピーカー同士の会話でしばしば聞かれるスラングではありますが、良くない言葉であることは忘れないようにしましょう。また、kick assにかかわらず、assを使うスラングは、すべて下品・侮辱的・乱暴なニュアンスを持っています。
ですから、適したタイミングかつ相手を見極めて使うのが肝心。もし使って良いかどうか自信がないときには、こうした表現があると知っておくだけにとどめ、自分では使わないようにすることをおすすめします。