英語のスラングは、なんとなく意味とリンクしているものもありますが、一見全く意味が想像がつかないものも多いですよね。
今回ご紹介する86も、そんなパッと見ただけでは意味が捉えづらいスラングのひとつ。実際これがスラングだと言われて、「一体どういう意味なの?」と驚いてしまう人も多いでしょう。
普段の会話の中では使うことはないかもしれませんが、実は限られた状況の中では、この86というスラングは非常によく使われています。
この記事では86の意味や使う場所、由来などについて詳しく解説していきます。英語のスラングに興味がある人は、ぜひ参考にしてくださいね。
1.86の意味とは?
「86」というスラングは、そのまま「エイティーシックス」と読み、以下のような意味があります。
- キャンセル
- 断る
- 削除
- 拒絶
- 売り切れ
- クビにする
- 取り除く
このリストを見れば、なんとなく何かを断ること、そこから無くすことを意味することがおわかりでしょう。
しかし上記の意味を見てもわかるとおり、86はさまざまなニュアンスを持つスラングです。そのため、86が正確に何を意味しているのかは、文脈で感じ取る必要があります。
とは言え、86がよく使われる場面というのは決まっていますし、状況がハッキリしていればニュアンスを読み取ることは難しくはないでしょう。
もしも意味がハッキリしなくても、何かを断ったり、何かがそこからなくなったりするというざっくりとした意味さえ覚えておけば、会話で困ることはないはずです。
2.86がよく使われるシチュエーション
実は86というスラングは、飲食店で非常によく使われるスラングです。スラングであることから、バーやクラブ、そしてカジュアルな雰囲気のレストラン、カフェなどで好んで使用されます。
では、86が具体的にどんなシチュエーションで使われているのか、簡単な例文とともにご紹介しましょう。
注文をキャンセルする場合
飲食店において、客が頼んだオーダーをキャンセルすることはしばしばあります。すでに入ったオーダーを客が頼んだ際、お店の人の間では、下記のようなフレーズが使われているかもしれません。
例文: The customer 86ed the beer.
(あのお客さんは、ビールをキャンセルしたよ。)
こうして文字にしてみるとちょっと発音がわかりづらいですが、「86ed」はそのまま「eighty sixed」と読みます。
気をつけたいのは、この表現はあくまでスタッフ同士のやりとりの中で使うもので、客の立場で何かをキャンセルしたいときには86を使わないということです。
飲食店で何かをキャンセルしたいときには「I’d like to cancel XXX(XXXをキャンセルしたいのですが)」などの表現を使うようにしましょう。
商品・料理が売り切れている場合
商品や料理が売り切れている場合にも、86という表現が使われます。
メニュー表があれば、86を近くに書いてあるかもしれません。また、オーダーしたものが売り切れている場合は、お店のスタッフの方から下記のように言われることもあるでしょう。
例文:Sorry but it’s 86ed already.
(すみません。それはもう売り切れました。)
外国人に対しては、ネイティブスピーカーもスラングを控えめにするため、あまり日本人である私たちにこの表現を使ってくる人はいないかもしれませんが、こういう表現もあると覚えておきましょう。
問題のある客を退店させたい場合
もうひとつ飲食店で使われる86をご紹介しましょう。
飲食店をはじめとしたサービス業では、困ったお客さんというのも来店します。あまりに周囲に迷惑をかけるほどのレベルなら、お店の方からお客さんに対して退店をお願いすることもあるはずです。
また、直接的に退店をお願いしなくても、どうにかして退店させることもあるでしょう。
そんな時には、下記のようなフレーズが使われます。
例文:We gotta 86 him. He’s been disturbing others too much.
(彼を追い出さなきゃ。他の人の邪魔になりすぎてるよ。)
もちろん、こんな表現を本人や他のお客さんに対して使ってはいけません。こちらもあくまでお店のスタッフ間でのやり取りで使うものだと覚えておきましょう。
何かを削除する場合
何かを削除する場合にも、86という表現が使われます。ここまでご紹介した飲食店であれば、メニュー表から何かを削除したいときなどに、86が使えますね。
その他、ウェブショップからアイテムを削除する場合、フォルダの中にあるファイルを削除する場合なんかにも、86が使えます。
ここではアイテムを削除する場合を想定した例文をひとつご紹介します。
例文:Can you 86 the winter items from our website?
(うちのウェブサイトから、冬商品を削除してもらえる?)
この例はウェブサイトについての話になっていますが、こちらの表現を応用すれば、メニュー表から何かを削除したいときにも、ファイルの削除が必要なときにも、86を使ったフレーズが使えるでしょう。
会社をクビになった場合
最後にご紹介するのは、会社をクビになった場合に使う86です。こちらは自分がクビになったときにも使えますし、他人がクビになったときにも使えます。
例文1:You know what? John got 86ed last week!
(知ってる?ジョンがクビになったんだよ!)
例文2:I am 86ed from the company.
(僕は会社をクビになりました。)
飲食店などで使われる表現に比べると、この表現が使われる機会は少ないかもしれませんが、こういう言い方もあると覚えておきましょう。
またここまでご紹介した他にも、86にはさまざまな使い方がありますが、ひとまずここでご紹介した意味さえ覚えておけば、日常生活で悩むことはないでしょう。
86というスラングに慣れれば、ここでご紹介したシチュエーション以外でも86が自然と使えるようになるかもしれませんね。
3.86のスラングが生まれた背景
なぜ86がキャンセルや削除といった意味になるのか不思議に思っている人もいるでしょう。ですが、残念ながら86というスラングが生まれた背景はハッキリとはわかっておらず、諸説ある状態です。
どの説が正しいのかは不明ですが、ここでは86がキャンセルや削除という意味になった理由とされる説をいくつかご紹介します。
ニューヨークにあったバー由来という説
アメリカには禁酒法という法律があった時代があります。その時代であっても、ニューヨークの86 Bedford Streetにあったバーでは、お酒が出されていたのだとか。
そのバーの番地である86が、「売り切れ」「メニューから削除された」という意味として飲食店で使われるようになったというのが、86の由来の有力説として存在しています。
どういう経緯でそうなったのかはわかりませんが、「86」が飲食店で非常によく使われるようになったのは、ここから始まっているという説がありますよ。
アメリカの海軍暗号コードが由来という説
アメリカ海軍で「廃棄処分」を意味する暗号コード「ATT-6」が86の由来になっているという説もなかなか有力です。
「ATT-6」を口に出して言ってみるとわかりますが、ちょっと86の発音と似ているんですね。早口で言うと、86に聞こえることもあるでしょう。
廃棄処分という意味が少し変化し、86=拒絶・削除・キャンセルなどの意味になったというのは、なかなか信ぴょう性がある説かもしれません。
カウボーイ文化に由来しているという説
アメリカのカウボーイ文化が由来となっているという説もあります。カウボーイたちの間で86がキャンセルや撤退を意味していたため、その意味と使い方がスラングとして残り、「キャンセル」「削除」などを意味するものとして使われるようになったという説です。
しかしこちらも、なぜカウボーイたちの間で86がキャンセル・撤退という意味だったのかは、よくわかっていません。
4.86を使うときの注意点
86は特殊なスラングですから、使う際には気をつけるべきこともあります。ここからは、そんな86を使うときの注意点についてもご紹介します。
文脈に敏感になること
86はさまざまなニュアンスを持つスラングですから、どのような状況で使用されているかを理解することがとても重要です。
通常は、飲食店などで使われるスラングなので、飲食店での使い方さえ抑えられていれば、困ることはないでしょう。
また、誰と誰の会話なのかにも着目し、意味をとらえ間違えないようにしましょう。
カジュアルな表現であることに注意
86というスラングは、特に下品だったり乱暴だったりするスラングではありません。しかしカジュアルでストレートな表現のため、フォーマルシーンや初対面の人に使うのには、あまり適していません。
使い方がつかめない間は自分で使うのは控え、どんな状況で誰が誰に対して使っているのかを観察してみましょう。そうすれば、自分でも使えるくらいにこのスラングを理解できるでしょう。
伝わらない場合もある
86はやや特殊なスラングで、誰でも知っているというわけではないかもしれません。特に飲食店で働いたことがない人や、ネイティブではない人だと、86というスラングが存在することさえ知らない可能性もあります。
ですから、86を使っても伝わらない場合もあることを覚えておきましょう。使う相手を選ぶスラングなので、どんな相手に使うのが適しているのかも把握できると良いですね。
5.海外の飲食店で働くなら86が役に立つ?
今回ご紹介した86は、あまり日常的な会話の中で使うスラングではなく、使う状況が限定されています。ですから、人によっては全く聞かずに終わってしまう人もいるでしょう。
しかし海外、特にアメリカの飲食店で働く機会があれば、86というスラングが役立つときもあるかもしれません。
たとえ使うことがなかったとしても、こうしたスラングがあることを知っておくことで、話のネタになることもあるかもしれませんね。