アメリカへの高校・大学留学を考えている人は、「commencement」という単語に出くわしたことがあるかもしれませんね。ちょっと堅めの雰囲気のある英単語ですが、これが何を意味するのか疑問に思ったことがある人もいるでしょう。
これはアメリカで「卒業」を意味する言葉なのですが、commencementの元々の意味を知っている人にとっては、ますます謎が深まるばかりではないでしょうか。
そこでこの記事では、commencementとは何か、単語の意味をご説明しつつ、graduationとの違いや、アメリカの高校・大学卒業式についてご紹介します。
こちらを参考にすれば、アメリカでの卒業式の雰囲気が少しわかるかもしれませんよ。
1.Commencementとは?
まずはCommencementという英単語について、どんな意味があるのかをご紹介しましょう。
元々の意味は「開始」「始まり」
Commencementの元々の意味は「開始」「始まり」などです。つまり、卒業とは全く逆のイメージを持つ言葉なんですね。
ケンブリッジ英英辞典における、この言葉の定義をみてみましょう。
the beginning of something(何かのはじまり)
引用元:https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/commencement
意味は上記のようにとてもシンプルですが、非常にフォーマルな言葉ですから、日常英会話で使うことはほぼないでしょう。ただ、フォーマルシーンでの会話の中では出てくるかもしれませんから、この元々の意味も覚えておいてくださいね。
アメリカの大学では「卒業式」
この「開始」「始まり」などを意味するcommencementという言葉は、アメリカでは卒業、もしくは卒業式という意味で使われています。
イギリスではcommencementを卒業式という意味で使いませんが、イギリスのケンブリッジ英英辞典でも、下記のような記述があります。
a ceremony at which students formally receive their degrees
(学生が正式に学位を受け取る式典)
引用元:https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/commencement
上記の記述のほか、アメリカ英語であることも明記されています。
このケンブリッジ英英辞典による定義を参考にすれば、アメリカの大学における卒業式とは、「卒業式」というよりは「学位授与式」といった雰囲気の様子。
何かから卒業するというよりは、「学位を受け取り、これから新たな人生の幕が開ける」ということで、新たな始まりを意味するcommencementという言葉が「卒業式」として使われるようになったのでしょう。
大学が終わったというイメージが強い日本の「卒業式」という概念に比べると、未来思考で前向きな感じ、希望に満ち溢れた感じがしますね。
2.CommencementとGraduationの違い
「卒業」にあたる英語というと「Graduation」という単語が思い浮かぶ人も多いはず。もちろんこのgraduationも、卒業という意味として使われています。
では、graduationは英語でどう定義されているのか、こちらもケンブリッジ英英辞典を参考にみてみましょう。
the fact of finishing a degree or other course of study at a university or school, or the ceremony at which you are officially said to have finished
(大学や学校で学位やその他の学習コースを修了したという事実、または正式に修了したとされる式典)
引用元:https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/graduation
辞書を参考にすると、こちらの方が「卒業」および「卒業式」というイメージに近いですよね。graduationの定義では「finish」という終了を意味する単語が使われています。
ではgraduationと卒業式を意味するcommencementでは、何かニュアンスに違いがあるのでしょうか?
実は、特に違いはなく、commencementを使うアメリカでもgraduationを使うこともあります。ただ、アメリカで一般的なのはcommencementの方だということです。ですから、アメリカ人に対してgraduationを使っても、普通に理解してもらえます。
ちなみにアメリカ以外の英語圏では、卒業および卒業式のことを「graduation」と言います。「式」を強調したいときにはgraduation ceremonyとなりますので、一緒に覚えておくと良いでしょう。
3.アメリカの卒業式の特徴6選
「開始」「始まり」という意味を持つcommencementが「卒業式」としても使われているアメリカ。実はこの言葉以外にも、まだまだ日本人にとっては意外な特徴が、アメリカの卒業式にはあるのです。
そこでここからは、そんなアメリカの卒業式について、日本の卒業式とは違う特徴を6つご紹介していきます。将来アメリカへの高校・大学留学を考えている人は、これを知っておけば、アメリカの学校の雰囲気が少し掴めるかもしれませんね。
開催時期は5月下旬〜6月初旬
日本で卒業式というと3月のイメージがありますね。厳しい寒さが弱まり、春の訪れを感じる頃が、日本の卒業式のイメージでしょう。
一方アメリカでは、卒業式は5月下旬から6月初旬あたりに開催されるのが一般的です。これは、アメリカと日本では、学年の区切り方が違うからです。
アメリカの学校は9月始まりで、6月〜8月が夏休みとなっています。この長い夏休みが学年と学年を区切る節目となっているため、卒業式はその長い休みの前に行われるわけです。
また、日本だと卒業式には春のイメージがあるかと思いますが、アメリカは初夏っぽいイメージがある地域が多いです。
ただし、アメリカはとても広く、北と南、もしくは西と東では気候も違うため、日本の春のイメージのように、統一されたイメージはないかもしれません。とは言え、アメリカでも5月6月が寒い地域はないため、卒業式の頃というのは比較的過ごしやすい時期となります。
全員同じ服を着る
アメリカの卒業式では、生徒たちは全員同じ服を着て式に出席します。日本だと、大学生は私服で学校に通うこともあり、卒業式でもユニフォームのようなものはありませんよね。
アメリカでも大学は私服というのは共通していますが、なぜか卒業式のときは全員あの海外ドラマなどで見かけるような四角いキャップとガウンを身に纏います。色も統一されているので、卒業式に行くと全員が同じ格好をしています。
ちなみにガウンの下は私服ですから、足元を見ると色とりどりだったりします。
屋外で行われることが多い
アメリカの卒業式は屋外で行われることが多いです。気候や学校の方針によっては、講堂のような場所で行われることもありますが、アメリカの卒業式と言えば屋外のイメージが強いです。
そういえば、ドラマなどでもあのキャップとガウンを身に纏って外にいるシーンを見かける気がしますね。日本の卒業式とは違って、開放感があるムードです。
卒業式の練習はない
日本では卒業式の予行練習が行われたりしますが、アメリカではそんな練習はしません。つまり、ぶっつけ本番で卒業式が行われます。
多くの人は卒業式に出席しても、入場して座って退場するだけですから、練習がない方が合理的。むしろ練習が行われる方が不思議なのかもしれませんね。
雰囲気はカジュアル
日本の卒業式はフォーマルな雰囲気で静かなイメージですが、アメリカの卒業式の雰囲気はもっとカジュアルです。先生からのスピーチも厳粛なものではなく、カジュアルに「おめでとう!」という雰囲気ですし、卒業式にくる保護者なども割とカジュアルな格好をしています。
明るく華やかな門出。それがアメリカの卒業式の雰囲気なのです。ですから式中も笑いが飛び交うこともあるんですよ。
高校の卒業式後は卒業ダンスパーティーがある
日本ではちょっと考えられないのが、卒業に伴う卒業ダンスパーティーではないでしょうか。アメリカの高校では、卒業式のあとに「プロムナード(promenade)」と呼ばれるダンスパーティーが開催されます。
通称は「プロム」と呼ばれており、海外ドラマなんかではこの略称の方をよく耳にするでしょう。ちなみにプロムはアメリカだけではなく、カナダやイギリスでも開催されています。
ちなみに大学の卒業式後には、プロムは開催されません。つまりプロムは高校を卒業した人にとっての一大行事。しかも、異性のパートナーと出席することが多く、プロム前にはこのパートナーが見つかるかどうかでドギマギするシーンなんかが、ドラマで描かれていたりします。
ちなみに女性は女性の友達同士でグループで出席することも多いので、友達がいる人だと楽しめるでしょう。
4.アメリカでの卒業は新しい門出!
Commencementという何かの始まりを意味する言葉が、「卒業式」という意味として使われているなんて、ちょっと素敵な感じがしますね。
アメリカでの高校・大学の卒業は、新たな門出と捉えられており、何かが終わったというより、この先の未来に目線が行っているようなイメージです。
アメリカの高校・大学に留学する人も、日本の大学に進学する人も、卒業式は新たな門出として意識してみてはいかがでしょうか。