日本といえば生ビールですが、アメリカでは軽くて喉越しがすっきりとするクラフトビールが人気です。「バドワイザー」はよく知られていますが、渡米する機会があるのであれば、日本では飲めないビールを楽しみたいですよね。この記事では、アメリカでおすすめのビールの銘柄を紹介しつつ、クラフトビールの種類の違いについて言及していきます。
アメリカのクラフトビールの歴史
1960年代、第二次世界大戦が終わると、従来の画一的なビールの味わいに嫌気がさしたビール愛好家たちによって新しいテイストのビールの生産がスタートします。
「カスケード」と呼ばれる柑橘系の強い香りを持っているホップ、「シエラネバダブリューイング」と呼ばれる苦味と香りが特徴のホップによってアメリカ人を魅了し始めます。
1980年、アメリカではクラフトブルワリーが誕生したことで、個性的なテイストのビールがアメリカ人を魅了しブームとなり、瞬く間に世界中で人気を集めるようになります。
アメリカのクラフトブルワリーの軒数は、1995年が794軒であるのに対して、2017年は10倍ちかい6,266軒にまで増加していることからも需要の高さが伺えます。
ちなみに日本国内でクラフトビールのブルワリーの数は、2018年の時点で400軒ほどに留まっていることからもアメリカのクラフトビール市場の大きさに驚きです。
ビールの種類
アメリカでは、さまざまなクラフトビールが作られていますが、その中でも特に人気度の高いビアスタイル(種類)は、以下のとおりです。
- アメリカンIPA
- ラガー
- ペールエール
- アメリカンアンバーエール
- カリフォルニアコモン
- インペリアルスタウト
それぞれの種類について解説します。
アメリカンIPA
アメリカンIPA(インディア・ペールエール)は、北米産のホップを使用していて、苦味と香りが強烈な王道のビアスタイルです。
発祥国 | イギリス |
発酵方法 | 上面発酵(エール) |
アルコール度数 | 5.0〜7.5% |
ビールの色 | 琥珀色 |
クラフトビールの中ではアルコール度数が高めで、パンチの効いた苦味があるため、初心者には不向きに思えるかもしれません。
しかし、苦味の少ないものを選べたり、香りには柑橘系、トロピカルフルーツ、松ヤニなど多種多様ですので、意外と飲みやすいです。
世界的にも認知度が高いので、とりあえずクラフトビールを飲むならアメリカンIPAという軽い気持ちで試してみると良いでしょう。
ラガー
ラガーは、アメリカ国内の70%のビール消費を占めている国民から愛されるビアスタイルです。
発祥国 | ドイツ |
発酵方法 | 下面発酵 |
アルコール度数 | 5% |
ビールの色 | ゴールド |
アメリカの大手ビールメーカーが製造しているビールの大半はアメリカンライトラガーであり、冷蔵技術の発達と大量生産による資本が結合したことによって不動の人気を誇ります。
米やコーンなどの穀物を使っているため、淡いゴールド色に仕上がり、見た目通りライト味わいで誰でも飲みやすいのが魅力です。
ただし、大量生産されているアメリカンライトラガーは、クラフトビールと呼ぶことはできませんので、アメリカンビールとして飲んでみてください。
ペールエール
ペールエール(Pale Ale)は、モルトのコクやホップの香りがふっくらと感じられるのが特徴のビアスタイルです。
発祥国 | イギリス |
発酵方法 | 上面発酵酵母(エール酵母) |
アルコール度数 | 4.5〜6.2% |
ビールの色 | ゴールド〜ディープゴールド |
パブ文化が浸透しているイギリスにルーツを持っていますが、アメリカに渡った後、飲みやすいように柑橘類の香りがついたアメリカン・ペールエールが誕生。
アメリカン・ペールエールが世界中ではスタンダードとなり、高い人気を誇ります。
日本ではビールは冷やすほど美味しいと言われていますが、ペールエールは少しぬるい程度の10〜13度ほどが飲み頃です。
真夏の時期にゆっくりと飲みたい時などに注文すると最適ですね。
アメリカンアンバーエール
アメリカンアンバーエールは、焙煎したホップを使用しているため、琥珀色をしていて、トーストやカラメルのような甘みのある風味が特徴のビアスタイルです。
発祥国 | イギリス |
発酵方法 | 上面発酵(エール) |
アルコール度数 | 4.5〜6.0% |
ビールの色 | 琥珀色 |
ルーツを辿ると、イギリスのペールエールやスコッチエールが基盤となっていますが、エールの特徴であるフルーティーな香りは弱目に改良されています。
名前に入っている「アンバー」とは、茶色と黄色を混ぜたような「琥珀色」を意味しているとおり、見た目がややダークになっています。
日本の生ビールとは味が異なるだけではなく、見た目も全く違いますので、インスタ映えにもばっちりなクラフトビールと言えるでしょう。
カリフォルニアコモン
いくつかのクラフトビールを紹介していてお分かりの通り、アメリカのクラフトビールのほとんどがイギリス発祥です。
そんな中、カリフォルニアコモンは正真正銘のアメリカで誕生したクラフトビールです。
発祥国 | アメリカ |
発酵方法 | 高温発酵 |
アルコール度数 | 5% |
ビールの色 | ディープゴールド |
本来であれば低温発酵するラガー酵母をエール酵母並みに高い温度で発酵させて造るハイブリットスタイルを採用しています。
特殊な発酵方法ですが、まだ冷蔵庫が誕生していなかった時代、温暖機構のカリフォルニアでラガービールを造る工程で偶然完成したものがカリフォルニアコモンでした。
別名「スチームビール」とも呼びますが、瓶の蓋を開けるたびにプシュッと炭酸ガスが強く噴き出ることが由来となっています。
インペリアルスタウト
インペリアルスタウトは、高いアルコール度数と焙煎された香ばしい香りが特徴的です。
発祥国 | イギリス |
発酵方法 | 上面発酵(エール) |
アルコール度数 | 8〜19% |
ビールの色 | ブラック |
ルーツを辿ると、かつてイギリスがロシア皇帝に献上品としてビールを渡すために、防腐対策としてアルコール度数を高めたことで誕生しました。
皇帝のための強いスタウトとして、インペリアルスタウトが誕生したということで、背景を聞くだけで特別感があります。
アルコール度数はビールの中ではトップクラスの10%前後であり、焙煎されたホップの香り、ふんだんに使ったモルトによる甘みが堪能できます。
コーヒー、ココア、バニラ、ピーナッツバターなどを副原料としている銘柄も多くて、ベースとなるインペリアルスタウトから多種多様なものが誕生しています。
アメリカのビールおすすめ
アメリカのビアスタイルについて紹介したところで、実際にアメリカに行ったときにおすすめなビールの銘柄を8つ紹介します。
バドワイザー
日本人でもビール好きなら1度は聞いたことがあるであろうバドワイザーは、世界80か国以上で販売されていて世界的にも高い人気を誇ります。
アメリカのクラフトビールは強烈な苦味が特徴的ですが、バドワイザーはすっきりとしていて、クセが少なく、どんな食事にも合わせやすいです。
ストーンIPA
「アメリカのビールと言えばストーン」と言っても過言ではないほど大王道のIPAビールです。
「市場の好みに左右されずに自分たちが飲みたいビールを追求する」という揺るぎない信念のもと製造されていて、世界中のビール好きを魅了し続けています。
一口目から日本のビールとの違いを体感できること間違いなしです。
マインドヘイズ
製品開発に1年の月日をかけて誕生したファイラーストーンウォーカー社の自信作です。
レモンやオレンジなどの柑橘系、パイナップルやライチなどのトロピカル系の香りがあり、ジューシーさとすっきりさが一度に楽しめます。
苦味の抑えられたビールですので、普段から苦味の強いビールが苦手という方でも試しやすいです。
ブルックリンラガー
ニューヨークのブルックリンが発祥となっている人気クラフトビールです。
モルトの甘みとホップの苦味がどちらも凝縮されていて、アメリカ国内でも人気度が高いため、王道のクラフトビールを楽しみたい方におすすめです。
日本では、キリンビールと業務提携を結んでいるため、日本国内でも購入できますが、本場で飲んでみると一味違うかもしれません。
ファットタイヤ
アンバーエールのビアスタイルの中ではナンバーワンの人気を誇っています。
ビスケットやカラメルのような香りが特徴的なモルトと、フレッシュな香りをしたホップが絶妙に絡み合っています。
苦味が程よくついているので、アメリカのビール特有の苦味の強さが苦手という方、クラフトビールには多少苦味が欲しいという方、どちらも楽しめるでしょう。
ブルームーン
女性からの人気も高い白ビールで、アメリカ国内でトップクラスの売り上げを誇っています。
ベルギーの醸造技術を使ったブルワーでブルームーンビールを醸造していて、ベルジャンホワイトに近いフルーティーかつスパイシーな味わいが特徴です。
そのまま飲むことはもちろん、オレンジスライムを添えることで、よりフルーティーさが際立ちますので、バーやレストランで注文してみると良いでしょう。
アンカースチーム
アンカーブリューイング社が誇る看板商品で、アメリカ発祥のカリフォルニアコモンです。
カリフォルニアコモンは、別名「スチーム」と呼ばれることがあるとお伝えしましたが、それはアンカースチームの商品の知名度の高さが関係しています。
カリフォルニアコモン=スチームというイメージが定着していることもあり、ビアスタイルの名称としても使われているのです。
ノースコーストオールドラスプーチン
アメリカのスタウトビール界でナンバーワンを誇っています。
ラム酒やチョコレートに近い芳醇な香りが特徴的で、さらにリッチで濃厚な甘みが凝縮されているので、食後の1杯やドライフルーツやナッツと一緒に飲むのがおすすめです。
ビールに関連するいくつかの国際大会でも受賞歴があるため、記念に飲んでみてはいかがですか。
アメリカでビールを飲むときの注意点
アメリカは、アルコールを飲む人が多いイメージがあるかもしれませんが、日本以上に厳しいルールが設けられています。
万が一、違反してしまうと刑罰に当たる可能性もあるため、以下の項目に気をつけましょう。
- ビールの飲酒・購入は21歳以上から
- 公共の場所でビールの飲酒は禁止
- 州によってビールが買える時間が限られている
それぞれの項目について解説します。
ビールの飲酒・購入は21歳から
アメリカの映画やドラマを見ていると大学生がお酒を手にしていることがありますが、アメリカの法律ではアルコールの飲酒・購入は21歳からと決められています。
日本以上に、アルコールの年齢制限は厳しく、クラブ、バー、レストランでは原則年齢確認ができる身分証の提示が必須です。
21歳未満の方がビールを購入したことが発覚すれば、お店側にも罰が下されるため非常に厳しいです。
アメリカでビールを飲むのであれば、必ず年齢を証明できる身分証を持ち歩きましょう。
公共の場所でビールの飲酒は禁止
日本では、コンビニで買ったお酒を歩き飲みしたり、ビーチや公園でお酒を飲む人たちがいますが、アメリカでは公共の場で飲酒をすることは禁止されています。
一部の州では、公共の場での飲酒が許可されていますが、大半は飲酒禁止ですのでトラブルに巻き込まれないようにするために控えましょう。
日本とアメリカでは「泥酔すること」に対するイメージが大きく異なり、アメリカ人とお酒を飲んだ時に、ベロベロになると相手からの印象が酷く下がる可能性があります。
飲む場所、飲む量、飲むペースには十分に気をつけましょう。
州によってビールが買える時間は限られている
日本では、原則24時間どこでもコンビニなどでお酒が購入できますが、アメリカでは治安の問題や宗教的な理由でお酒の販売が制限されています。
教会に行く人の多い日の酒類販売禁止、平日21時以降の種類販売禁止など、州によって異なりますので、自宅でお酒を飲みたい方は、いつ買えるか確認しておきましょう。
また、アメリカでは1840年から禁酒法の運動が盛んで、1920年〜1933年までは禁酒時代がありました。
現在はお酒を飲む人たちも多いのですが、中にはお酒を飲むことに強く反対する人もいるため、買ったお酒をカバンに入れるなどするとトラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
この記事では、アメリカのビール事情について解説しました。
日本にもたくさんの種類のビールがありますが、アメリカにも日本とは違った特徴や味わいのビールがたくさんあることが分かります。
多くは、パブ文化が根付いているイギリスにルーツを持っているようですが、イギリスのビールよりもパンチの効いた味わいが特徴です。
また、アメリカで誕生したビールもあるので、ぜひアメリカ産のビールを楽しんでみてください。