世界有数の治安の良い国で生活している日本人は、留学先で思わぬトラブルに巻き込まれて被害に遭うケースがたびたび見受けられます。これからアメリカ留学を検討している方は、留学準備期間中に、アメリカのリアルな内部事情を知っておいて損はありません。特に、映画やドラマで描かれているアメリカとは異なる部分も多いです。実際に、被害に遭うかどうかは別として、事情を知っておくだけで予防・リスクマネジメントに繋がります。この記事では、アメリカ留学を検討している方に向けて、リスクマネジメントの方法と現地事情について解説します。
アメリカのリアルな現地事情
結論からお伝えすると、普通に生活している分にはアメリカが特別危険であるということはありません。
発砲事件や人種差別に関する傷害事件のニュースを見る機会が多い方は、「アメリカ=危険でいっぱい」と認識している方も多いのではないでしょうか。
ただし、実際にアメリカで生活してみると、アメリカ人は、教養のある方、正義感の強い方が多い印象です。
地下鉄で、人種差別・性差別をしている現場に居合わせた人が、反論したり、みんなで被害者を庇うようなシチュエーションも見られます。
一方で、日本以上に銃やドラッグの問題が深刻という一面もあります。
具体的にアメリカがどのような問題を抱えているかについて解説します。
銃問題
アメリカは、立て続けに発砲事件が発生していて、罪のない子どもを含む市民たちが大勢被害にあっている現状があります。
最近では、ニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットでアフリカ系を狙った乱射事件(10名死亡)、テキサス州ユバルディの小学校での乱射事件(21名死亡)などが発生しました。
未成年の加害者がお金を出して、簡単に人を殺害できる威力のある銃を簡単に購入できる環境が問題視されているものの、いつまでたってもアメリカの銃規制は進みません。
学校内で発砲事件が起こることもあるため、アメリカ留学をする方は銃のトラブルには要注意です。
人種差別
アメリカは、多種多様な人種の人たちが集まっているものの、いまだに一部の人たちの中では強い人種差別の意識が残っています。
前アメリカ大統領のトランプ氏がコロナウイルスのことをチャイナウイルスと表現したことをきっかけに一部のアメリカ人の中でアジア人への差別意識が高まりました。
罪なきアジア人が罵声を浴びせられたり、傷害事件に巻き込まれるケースが多発したのです。
日本でも外国人に対する差別が残っているのと同様に、モラルや教養に欠けた人たちと出会うと、人種差別をされる可能性があります。
ドラッグ
アメリカはドラッグ・麻薬が盛んに流通していて、大学生などがドラッグの売人をしていることもあります。
学生パーティーで楽しくなれるからと勧められたり、知らない間に飲み物の中に混ぜられてしまうケースも報告されているため注意が必要です。
日本以上に手軽にドラッグが手に入れられるものの、一部の州を除いて、マリファナを含む全てのドラッグは原則禁止です。
刑罰に問われた場合、学生ビザが剥奪されたり、裁判になり懲役・罰金になる可能性があります。
また、ドラッグは依存性が高いため、周りの雰囲気に流されて服用してしまうと、やめられなくなり、身を滅ぼすことにつながりかねません。
ホームレス
アメリカは、都市部を中心に経済格差が開き続けていて、ホームレスの数が急増しています。
日本のホームレスの人口は、約4,500人(2019)に対して、アメリカのホームレスの人口は、約56万人(2020)と言われています。
アメリカのホームレスの多い州は、西海岸・カリフォルニア州、ニューヨーク州、フロリダ州です。
ホームレスになるバックグラウンドは、さまざまですが、約3分の1は、ドラッグやアルコールなどの問題を抱えていることが推定されています。
ホームレスは、増加し続けているのが現状ですが、治安にも大きく関与してくるため、アメリカが抱える深刻な社会問題のひとつと言えるでしょう。
治安の悪い場所はどう見分ける?
日本では、小さな子どもがひとりで電車に乗ったり、女性や子どもが夜道をひとりで歩くのは珍しいことではありません。
しかし、アメリカの留学生活中に日本での当たり前をしてしまうと思わぬトラブルに巻き込まれかねませんので注意しましょう。
アメリカの留学生活では、治安の悪いと言われている場所を避けるため、次のようなエリアには近づかないようにしてください。
- 人通りの少ない
- 深夜・朝方
- ゴミが散乱している
- 落書きが多い
- レストランやショップの窓に鉄格子がついている
それぞれの項目について解説します。
人通りの少ない
日本よりも犯罪数の多いアメリカでは、少しでも人通りの少ないところに入ってしまうと犯罪者の餌食になるリスクがあるため近づかないようにしてください。
大通りから一歩入った裏路地や、駐車場の入り口、トンネル、ビルの裏側などは、街の死角になります。
アメリカに来たばかりの時は、右も左もわからずマップやスマホに釘付けになるかもしれませんが、現地人でないとわかれば、さらに狙われやすくなります。
トラブルが起きた時に、すぐSOSを出して気づいてもらうためにも、できるだけ人通りの多い場所を歩くように心がけてください。
深夜・朝方
深夜や朝方の時間は、人の数が少なかったり、あたりが薄暗かったりするため、犯罪者に狙われやすいです。
お酒を飲んだり、ドラッグをした人たちが放浪している可能性もあるため、できるだけ出歩かないようにしましょう。
もしも、どこかに行く予定があったり、帰る予定があるのであれば、誰かの車に乗せてもらったり、タクシーやウーバーを使うことをおすすめします。
ゴミが散乱している
アメリカの治安の悪い場所は、ゴミが散乱していることが多いです。
ゴミ箱が置かれていなかったり、ゴミ溜めのようになっているエリアは、行政の管轄外になっていることが多く、自然とホームレスが集まったり、無法地帯となっていきます。
一方、観光地や行政の管理が行き届いているエリアは、ゴミ箱が設置されていたり、ポイ捨てはあるものの、定期的にゴミ収集車がくるようになっています。
落書きが多い
日本にも落書きされている場所はたくさんありますが、アメリカでも人通りの少ない場所や不良の溜まり場に多くの落書きがされています。
落書きそのものは禁じられているため、落書きの多い場所には、危険が多いと考えて近寄らないことが賢明です。
レストランやショップの窓に鉄格子がついている
アメリカでは、コンビニやレストランなどが襲撃されることがあるため、治安の悪いエリアのお店の窓には、鉄格子がついていることが多いです。
鉄格子を取り付けることで、強盗に入られることを防いだり、外から物を投げられて窓が破られることを防ぎます。
アメリカ全土のお店に鉄格子がついているわけではないため、治安の悪いエリアに設置されていることが想定されます。
【リスクマネジメント】身の危険を感じた時の対処方法
アメリカ留学中に身の危険を感じる場面に遭遇した時は、次のように対処しましょう。
- 助けを求める
- 警察に連絡する
- 来た道を引き返す
- タクシーに乗る
それぞれの対処方法を解説します。
助けを求める
アメリカ留学生活中に、身の危険を感じたときは、周りの人に助けを求めましょう。
悪質なケースでは、観光客やアメリカに来たばかりの留学生をターゲットに犯罪を企む人もいるため、現地の人に助けを求めるだけで相手を怯ませることができます。
また、アメリカには親切な人が多いため、よほど忙しくしていない限り、困っている人を見逃しません。
警察に連絡する
トラブルに巻き込まれてしまったときは、まず第一に警察に連絡をして被害内容を伝えましょう。
緊急時の連絡先は、「911」で警察・消防・救急車の手配が可能です。
また、アメリカ主要都市の非緊急時の連絡先は、次のとおりです。
- ワシントンDC地区
- モンゴメリー郡
- ロックビル市
- ベセスダ
- シルバースプリング
- ウィートン
- ジャーマンタウン
- ゲイザーズバーグ
- ボルチモア郡
- ボルチモア市
- プリンスジョージス郡
- グリーンベルト市
- ハワード郡
- フェアファックス郡
- フェアファックス市
- ヴィエナ市
- アレクサンドリア市
- アーリントン郡
- リッチモンド郡
- リッチモンド市
- ニューポートニューズ市
- バージニアビーチ
騒音、近所トラブル、車両放置、落書きなどで悩んでいる方は、上記の電話番号に相談すると対処方法が見つかるかもしれません。
来た道を引き返す
アメリカでは、大通りを歩いていたはずなのに気づいたら人気のない小道に迷い込んでしまうことがよくあります。
怪しげな人たちが集っている薄暗い路地などに入り込んでしまったときは、すぐに来た道を引き返すことが賢明です。
突然、引き返すと不審に思われるのでは?と考えて、突き進んでしまうことがあるかもしれませんが、危険なエリアの中心にたどり着いてしまう可能性があります。
確実に身の安全を確保するためには、すぐに引き返すようにしてください。
タクシーに乗る
街中でトラブルに巻き込まれたり、危険を察知したときは、その場からすぐに立ち去るためにもタクシーを拾って退散するのも大切です。
学生などは、経済的な理由でタクシーを使う習慣がないかもしれませんが、数キロ先まで乗せてもらう分には高額になることはありません。
トラブルに巻き込まれないための対策方法
アメリカ留学生活を送る上で、トラブルに巻き込まれないための対策方法は、次のとおりです。
- 危険なエリアを現地の人から聞いておく
- 人通りの少ない場所・時間帯に一人で歩くことを避ける
- 住宅街・路地裏に行かない
- ブランドものを身につけない
それぞれの対策方法について解説します。
危険なエリアを現地の人から聞いておく
語学学校の先生や現地の友達に「ひとりで行くべきではない場所」「近寄らない方が良い場所」を聞いておきましょう。
治安が良いと言われている都市にも、アルコール依存症やドラッグ中毒者が集まる危険なエリアが必ずあります。
現地の人から事前情報を得ておくことで、トラブルを最小限に抑えられます。
人通りの少ない時間帯に一人で歩くことを避ける
アメリカの街は、日中と夜でガラリと雰囲気が変わるエリアが多いため、人通りの少ない時間帯は、家にいるようにしてください。
日本は、田舎町にも街灯がついていますが、アメリカはほとんど街灯がついていないため、犯罪の温床となっています。
住宅街・路地裏に行かない
アメリカは日本以上に犯罪数が多く、その大半が住宅街や路地裏で発生しています。
自分の自宅周辺以外の住宅街や近道できるからという理由で路地裏をうろつくことは控えましょう。
ブランドものを身につけない
日本ではおしゃれな人が多いですが、アメリカではハイブランドのものを身につけるとターゲットになるリスクがあります。
もちろん、アメリカにもおしゃれな人たちがたくさんいるので、自分を表現するという意味ではおしゃれを楽しむのも良いでしょう。
ただし、危険なエリアや貧困地域を歩くときに、ハイブランドのものを身につけていたり、歩きスマホをしていると、窃盗などの被害にあうリスクがあるため注意してください。
まとめ
この記事では、アメリカ留学の危険性について解説しました。
普通に生活する分には、特別危険というほど治安の悪い国ではありませんが、部分的に危険が潜んでいるエリアは複数あります。
留学準備期間から都市の治安レベルや危険なスポットを把握したり、被害に合わないための防犯グッズ・防犯対策をしておくと安心です。
万が一、トラブルに巻き込まれてしまったときは、現地の人や警察、大使館などに助けを求めて解決してください。